志の経営か、戦略的な経営か
2022.09.06マネジメント組織づくり
御社の経営方針はどのようなものでしょうか?
理念や想い、ミッションやビジョンを中心にされている企業経営でしょうか。極めてロジカルに経営戦略を構築した企業経営でしょうか。どちらのほうが成果が出るのかを企業経営の歴史と共に考察していきます。
目次
1.経営戦略の黎明期
2.経営戦略の台頭期
3.代表的な経営戦略
A)ポジショニング派
B)ケイパビリティ派
C)ビジョナリー派
D)フィロソフィー派
4.まとめ
1.経営戦略の黎明期(1900~1950年代)
産業革命後の1910年頃は企業といえば、工業や製造業がメインで、いわゆる工場が多数を占めていました。その工場においての生産性向上のため「科学的管理法」というのが提唱されました。(フレデリック・テイラー)作業を標準化、マニュアル化することで生産性は向上し、賃金の上昇も実現できました。しかしながら科学的な管理は人間性を尊重していないという見方が次第にされるようになりました
1920-30年頃に作業環境の改善より、良好な人間関係が職場には重要であるという「人間関係論」が提唱されました。(エルトン・メイヨー)この時代は豊かさが増し、とにかく生きるために働くという原始的な活動から、人間の豊かさへの欲求が増えてきた時代背景があります。
工場の作業現場を対象にした「科学的管理法」に対して「企業全体を管理対象」にした考え方も出てきました(アンリ・フェイヨル)この考えによって生まれたのがPDCAサイクルの原型といわれている「経営管理プロセス」です。
そして1929年の世界恐慌などの大きな外部環境の変化に晒されていた時代に、企業は外部環境の変化に対応していく仕組みであるという提唱もされました。そのために組織の成立要件として①共通目的②貢献意欲③コミュニケーションの3つと定義されました。特筆すべき点は経営者の仕事は①の共通目的を創り上げることであるとしたことです。
経営戦略の黎明期においては「企業内の管理」にフォーカスされていました。
2.経営戦略の台頭期(1960~1980年代)
欧米の経済は大きく成長しました。さらに企業のM&Aが盛んに行われました。そのために企業は複数の事業を持つこととなりました。そこで、それぞれの事業の「事業戦略」と企業全体の戦略である「企業戦略」を分けて考える必要が提唱されました。事業ポートフォリオという概念も生まれました。
また、競争で打ち勝つにはコアとなる強みが必要であり「コアコンピタンス論」や「リソースベースドビュー」が提唱されました。コアコンピタンスやリソースベースドビューは、端的に表現をすれば「競争に打ち勝つための経営資源の分析」です。
数字や事実に基づいた極めて分析的な手法によって、経営の方針を決める。これを「大テイラー主義」とよばれました。
3.代表的な経営戦略
A)ポジショニング派(1970年代)
ポジショニングの経営戦略とは「儲かりうる市場」を選び「儲かる位置取り」をすることです。
「儲かりうる市場」の選定には5フォース分析を使います。5フォースとは、①同業他社との関係性②買い手の交渉力③売り手の交渉力④新規参入企業の脅威⑤代替品の脅威でその市場を分析します。強い競合がいるか、顧客に主導権があるか、仕入れ先に主導権があるか、参入障壁が低いか、変えの利きやすい商品やサービスなのかなどです。
「儲かる位置取り」はポーターの戦略3類型とよばれ「差別化戦略」「コストリーダーシップ戦略」「集中戦略」に分類されます。独自性で勝負をするか、安さで勝負をするか、ニッチなところにフォーカスをするかなどです。
中小企業においてはこの「集中戦略」はとても重要な経営戦略ともいえます。
B)ケイパビリティ派(1980年代)
ポジショニング重視の企業は1990年の前半に経営危機に見舞われたケースも少なくありませんでした。そのような状況下で台頭してきたのが「ケイパビリティ」を重要視する戦略アプローチです。
メジャーなのが「コアコンピタンス経営」というもので、持続的な競争優位をもたらすコアとなる企業の能力です。そしてその能力を見極め、活かすことが重要であり、その能力が有効なポジションを定めるものです。ポジショニング派のポーターとは入り口と出口が逆になっています。
代表的な分析手法として①資源の価値②資源の希少性③資源の模倣困難性④組織の4点からみるVRIO分析というものがあります。
C)ビジョナリー派(1994年~)
マッキンゼー出身のジェームズ・C・コリンズと、GE出身のスタンフォード大学教授ジェリー・I・ポラスによって書かれた『ビジョナリー・カンパニー』という本が全米で5年連続ベストセラーになりました。この本では永続する企業の共通点がまとめられています。本書で感化された経営者はかなり多いのではないでしょうか。もはや研究データの域を超え、この本そのものが経営戦略という位置づけになりました。
【参考】ビジョナリー・カンパニーの8つの生存の法則
①製品ではなく企業そのものが究極の作品と考える②現実的な理想主義③基本理念を維持し進歩を促す④社運を賭けた大胆な目標⑤カルトのような文化⑥大量のものを試して、うまくいったものを残す⑦生え抜きの経営陣⑧決して満足しない
D)フィロソフィー派
名経営者である稲盛和夫氏が提唱しているのは「アメーバー経営」と「フィロソフィー」です。アメーバー経営とは①非常に小さな組織で独立採算②収支決算は「時間当り採算」③タイムリーで正確な経営情報を主としています。社員1人1人にコスト意識や作り出す付加価値を計算させて当事者意識を持たせ、行動変容を促します。
アメーバー経営で利益至上主義にならぬよう、大切にするべき価値観があると提唱しています。それをフィロソフィー(哲学)として持つことは全ての土台であるという考え方です。
2004年に発行され10年で100万部を突破した著書「生き方」は、世界でも14か国で翻訳され300万部以上の発行となっています。浅井も「生き方」を営業マン時代に読み、仕事への捉え方が大きく変わりました。
6.まとめ
識者や時代の流れによってはやりすたりのある経営戦略はこれが正解というものはありません。ガチガチの管理を徹底して成功している企業もあれば、社員の働きがいを軸にした経営で成功している企業もあります。経営者が一番しっくりくる経営のスタイルを確立することが最も重要ではないでしょうか。
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代表取締役 浅井隆志
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