なぜ優秀な人材が辞めるのか?上司と部下のコミュニケーションの真実
2025.07.16

優秀な人材が辞める本当の理由
上司と部下のコミュニケーションは、企業の成長と存続を左右する重要な要素です。多くの経営者や人事担当者が頭を悩ませる「優秀な人材の流出」問題の根底には、実はコミュニケーションの質が深く関わっています。
✅会社に伝えた退職理由1位「別の職種にチャレンジしたい」22%
✅本当の退職理由1位「人間関係が悪い」46%
エン・ジャパンが2024年に実施した「本当の退職理由」調査によると、5,168名の回答者のうち、半数以上が退職時に「会社に伝えなかった退職理由がある」と回答し、その本当の退職理由のトップは「人間関係」でした(※1)。会社に伝えた退職理由では「別の職種にチャレンジしたい」が22%で1位でしたが、これは表面的な理由に過ぎず、実際は職場の人間関係、特に上司と部下のコミュニケーション不足が大きな要因となっています。
上司を理由退職を考えた経験がある 66.7%
さらに衝撃的なのは、アシロ社が2024年に実施した調査結果です。上司がいる、もしくは上司がいた経験をもつ20歳以上の男女1,656名を対象とした調査で、66.7%が上司を理由に「退職」を考えた経験があり、実際に退職した人も4割弱に上ることが明らかになりました(※2)。
エン・ジャパンが実施した別の調査でも、1,800名のビジネスパーソンのうち7割が、上司または部下とのコミュニケーションに「課題がある」と回答しています。具体的な課題として、上司側は「相手との精神的な距離を感じる」(40%)、部下側は「指示・指導がわかりにくい」(48%)が最も多く挙げられました(※3)。
コミュニケーションの円滑化は心理的安全性から
Googleが2012年から2015年にかけて実施した「プロジェクト・アリストテレス」では、高いパフォーマンスを発揮するチームの最重要要素は「心理的安全性」であることが判明しました。心理的安全性の高いチームは、離職率が低く、ほかのメンバーが提案した多様なアイデアの活用がうまく、マネージャーから評価される機会が約2倍であり、収益性も高いことが明らかになっています(※4)。
心理的安全性とは、チームメンバーがリスクを取ることを恐れず、自分の意見や疑問を自由に表現できる環境のことです。この心理的安全性を構築する上で、上司と部下のコミュニケーションの質が決定的な役割を果たします。心理的安全性が低い職場では、部下が失敗を恐れて挑戦を避け、改善提案や新しいアイデアが生まれにくくなり、結果的に優秀な人材の流出を加速させます。
※1)出典:エン・ジャパン「本当の退職理由」調査2024
※2)出典:アシロ「上司とのコミュニケーション」調査2024
※3)出典:エン・ジャパン「上司・部下間のコミュニケーション」調査
※4)出典:Google re:Work「効果的なチームとは何か」
効果的なコミュニケーション戦略と成功事例
上司と部下のコミュニケーションを改善するための最も効果的な手法の一つが、1on1ミーティングの導入です。リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、従業員規模3,000名以上の企業では75.7%、700~2,999名企業では69.9%、100~699名企業では57.7%が1on1ミーティングを施策として導入しており、全体では7割近くの企業が導入している状況です(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「1on1ミーティング導入の実態調査」)。
ヤフーの成功事例
ヤフー株式会社は2012年から全社的に1on1を導入し、顕著な成果を上げています。同社では、1on1の全社導入と時期を同じくして離職率が下がり、特に新卒社員の離職率は世の標準に比して極めて低い水準を実現しました。現在では社員7,000名のうちの約9割が隔週1回以上、約30分の1on1を実施しています(出典:本間浩輔著『ヤフーの1on1』)。
✅効果的な1on1ミーティングには、以下の要素が不可欠です。
1)頻度と時間の確保
週1回15分、または隔週30分など、定期的かつ継続的な実施が重要です。上司と部下のコミュニケーションは、一時的なイベントではなく、継続的なプロセスとして捉える必要があります。
2)対話の質の向上
ZENKIGEN社の2022年調査では、63.3%のマネージャーが1on1ミーティングの継続を希望する一方で、「目的や効果的な実施方法が分からない」ことが課題として挙げられています(※1)。効果的な1on1のためには、傾聴スキルやフィードバック手法の習得が重要です。
3)導入目的の明確化
リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、1on1導入の主な目的は「社員の主体性・自律性の向上」と「自律的キャリア形成の支援」が上位を占めています。単なる業務報告の場ではなく、部下の成長支援の場として位置づけることが重要です。
4)心理的安全性の構築
Googleの研究が示すように、心理的安全性は「その他の4つの力を支える土台であり、チームの成功に最も重要な要素」です(※2)。上司と部下のコミュニケーションにおいて、部下が安心して自分の意見を表現できる環境づくりが不可欠です。
※1)出典:ZENKIGEN「1on1ミーティングに関する意識調査」
※2)出典:Google re:Work
組織の未来を決める上司と部下のコミュニケーション
優秀な人材の流出は、上司と部下のコミュニケーション不足が根本原因であることが多くの調査で明らかになっています。エン・ジャパンの調査が示すように、本当の退職理由の多くは「人間関係」であり、アシロ社の調査では約7割が上司を理由に退職を検討した経験があることが判明しました。
心理的安全性の構築、1on1ミーティングの効果的な実施、フィードバック文化の醸成など、具体的な施策を通じて上司と部下のコミュニケーションを改善することが、組織の競争力強化につながります。ヤフーの事例が示すように、1on1の導入は離職率の低下という目に見える効果をもたらしています。
人事担当者や経営者にとって、上司と部下のコミュニケーション改革は単なる人事施策ではなく、企業の持続的成長を実現するための戦略的投資と位置づけるべきでしょう。今こそ、上司と部下のコミュニケーションの質を見直し、組織全体の変革に着手する時です。
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