パワハラにならない叱り方、SBIIフィードバック
2025.04.28

パワハラにならない叱り方の基本と法的背景
はじめに:パワハラと適切な指導の境界線
職場での指導や叱責は、時として「パワーハラスメント」との境界線が曖昧になりがちです。部下の成長を促すための指導なのか、それとも感情的な叱責なのか。この境界線を見極めることは、管理職にとって非常に重要なスキルとなっています。
近年、パワハラに関する相談件数は増加の一途をたどり、2019年の改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)の施行により、企業にはパワハラ防止措置が義務付けられました。人事担当者や経営者は、適切な指導方法を理解し、実践することが求められています。
本記事では、パワハラにならない叱り方の基本原則から具体的なテクニックまで、実践的なガイドラインをご紹介します。
パワハラの法的定義と最新動向
厚生労働省によると、職場におけるパワーハラスメントは「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。
この3つの要素がすべて満たされるとパワハラと認定される可能性が高まります。特に「業務上必要かつ相当な範囲」の解釈が難しく、指導や叱責がパワハラと認定されるケースも少なくありません。
最新の動向としては、テレワークなど働き方の多様化に伴い、オンライン上でのコミュニケーションにおけるパワハラも問題視されています。
パワハラにならない叱り方の基本原則
パワハラにならない叱り方には、以下の基本原則があります。
叱り方の基本原則
✅ 事実に基づいて叱る:感情や思い込みではなく、具体的な事実に基づいて指導する
✅ 行為を叱り、人格を否定しない:「あなたはダメだ」ではなく「この行動が問題だ」と伝える
✅ 目的を明確にする:なぜ叱るのか、何を改善してほしいのかを明確に伝える
✅ 一対一で話す:公衆の面前で叱ることを避け、プライバシーに配慮する
✅ 感情的にならない:怒りをコントロールし、冷静に対話する
NGな叱り方とその問題点
パワハラと認定されやすい叱り方には、以下のようなものがあります。
✖ 人格否定:「お前にはセンスがない」「使えない」など人格を否定する発言
✖ 脅迫的言動:「クビにするぞ」「左遷するぞ」などの脅し
✖ 過度な叱責:長時間に渡る説教や、繰り返し同じことを叱る
✖ 公開処刑:他の従業員の前で恥をかかせる
✖ 身体的接触:書類を投げつける、肩を叩くなどの身体的接触
こうした叱り方は、部下の自尊心を傷つけ、モチベーションの低下や心理的ストレスを引き起こします。企業にとっても、パワハラ訴訟や労災認定によるコスト、人材流出、企業イメージの低下など、さまざまなリスクが生じます。
パワハラにならない叱り方の実践テクニック
効果的なフィードバック SBIIフィードバック
パワハラにならない叱り方の実践において、SBIIフィードバック法は、多くの企業で採用されている効果的な手法です。
Situation(状況):5W1Hで詳細に伝える
Behavior(行動):主観ではなく事実を伝える
Impact(影響):行動が周囲に与えた影響を事実として伝える
Improvement(改善):速やかに解決策への議論を開始する
例文
「先ほどの顧客ミーティングで(状況)、
準備不足の説明をしてしまったことで(行動)、
クライアントの信頼を損ねてしまったね(影響)。
今後実施する顧客ミーティングに向けて、どんな事前準備が必要かな?(改善)」
このようなフィードバックは、具体的で改善につながりやすいものです。
また、「サンドイッチ法」も効果的です。これは、【ポジティブなフィードバック→改善点の指摘→ポジティブな締めくくり】という流れで伝える方法です。
場所と時間への配慮
パワハラにならない叱り方において、場所と時間の選択は非常に重要です。
適切な場所の選択:
✅ 原則として個室やプライバシーが確保できる場所で行う
✅ オープンスペースや多くの社員がいる場所での叱責は避ける
適切なタイミング:
✅ 感情が高ぶっている時は避け、冷静になってから話し合う
✅ できるだけ問題が発生した直後に行う
✅ 相手の状況も考慮する(重要な仕事の直前などは避ける)
一般的に、「24時間ルール」を採用している企業もあります。これは、問題を発見してから24時間以内に対応するが、感情的になっている場合は一度冷静になってから対応するというルールです。
叱った後のフォローアップの重要性
パワハラにならない叱り方は、叱った後のフォローアップまで含めて完結します。
適切な指導とは、問題点を指摘して終わりではなく、その後の成長を支援することが不可欠です。効果的なフォローアップには、まず改善のためのサポートを積極的に申し出ることが重要です。「どうすれば良くなるか」を一方的に伝えるだけでなく、具体的な改善策を部下と一緒に考えることで、当事者意識と解決への意欲を高めることができます。また、定期的に進捗を確認することで、部下は見守られていると感じ、改善に向けた継続的な取り組みが促進されます。そして、改善が見られた際には積極的に認め、称賛することで、ポジティブな強化につながります。
「叱る」と「見捨てる」は根本的に異なるものです。叱った後のフォローが不十分だと、部下は「見捨てられた」と感じ、モチベーション低下や信頼関係の崩壊につながりかねません。真の意味での指導とは、問題点の指摘だけでなく、その後の成長を支える一連のプロセスなのです。
組織文化の構築におけるポイント
個人の努力だけでなく、組織全体でパワハラにならない叱り方を実践する文化を構築することが重要です。
組織文化構築のポイント
組織内で「適切な叱り方」のモデルケースを共有することで、管理職全体の指導スキルを向上させることができます。
まとめ:パワハラのない職場づくりに向けて
本記事では、パワハラにならない叱り方について、基本原則から具体的なテクニックまで詳しく解説してきました。
パワハラにならない叱り方の基本原則として、事実に基づく指導、行為と人格の分離、目的の明確化、プライバシーへの配慮、感情のコントロールが挙げられます。これらを踏まえた上で、SBIフィードバック法やサンドイッチ法などの具体的テクニックを活用することで、効果的な指導が可能になります。
最終的に、パワハラにならない叱り方を実践することは、単にリスク管理というだけでなく、従業員の成長を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させることにつながります。人事担当者や経営者の皆様には、本記事で紹介したポイントを参考に、より良い職場環境づくりに取り組んでいただければ幸いです。
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