PM理論とSL理論を活用した管理職研修とは?
2025.05.28

管理職研修におけるPM理論・SL理論の重要性
現代の管理職には、多様な人材をマネジメントし、組織の成果を最大化することが求められています。
しかし、多くの中小企業では、管理職研修の効果が思うように上がらないという課題を抱えているのが実情です。
この課題を解決する鍵となるのが、PM理論とSL理論という2つの実証されたリーダーシップ理論の活用です。これらの理論は、管理職が持つべきスキルを体系化し、部下との関係性を最適化するための具体的な指針を提供します。
✅ PM理論の特徴
・P(Performance)機能:目標達成や業績向上に焦点
・M(Maintenance)機能:人間関係の維持や職場環境の改善に焦点
✅ SL理論の特徴
・部下の能力と意欲に応じたリーダーシップスタイルの使い分け
・4つの発達段階に対応した適応的なマネジメントの実現
一般的に、これらの理論を活用した研修を実施した企業では、管理職の自己理解が深まり、部下との関係性が大幅に改善される傾向が見られます。特に中小企業においては、限られた人材でより大きな成果を生み出すために、これらの理論的背景に基づいた研修設計が不可欠となっています。
PM理論を活用した管理職研修の設計
PM理論の詳細理解
PM理論は、日本の心理学者 三隅二不二(みすみじゅうじ)氏によって提唱されたリーダーシップ理論。
リーダーの行動を2つの軸で分析します。
機能 | 内容 | 具体的行動例 |
---|---|---|
P機能(Performance) | 課題達成機能 | 目標設定、進捗管理、業務指示、品質管理 |
M機能(Maintenance) | 集団維持機能 | チームワーク促進、メンバーへの配慮、職場環境改善 |
研修への具体的活用方法
研修の第一歩として、管理職自身が自分のP機能(課題達成能力)とM機能(集団維持機能)をどの程度発揮しているかを客観的に評価します。これにより、自分のリーダーシップスタイルの偏りを認識できます。
4つのリーダーシップタイプの理解
PM型:P機能・M機能ともに高い(理想的なリーダー)
Pm型:P機能が高く、M機能が低い(タスク重視型)
pM型:P機能が低く、M機能が高い(人間関係重視型)
pm型:両機能ともに低い(消極的リーダー)
各タイプの特徴を理解した後、具体的なケーススタディを通じて、状況に応じたP機能・M機能の使い分けを練習します。
例 )
締切が迫ったプロジェクトでは、P機能(課題達成機能)を強化する。
チームの士気が低下している場合は、M機能(集団維持機能)を重視する。
SL理論を活用した管理職研修の設計
SL理論の核心理解
SL理論(Situational Leadership Theory)は、ケン・ブランチャードとポール・ハーシーによって開発された理論で、部下の成熟度に応じてリーダーシップスタイルを変えることを提唱しています。
4つの発達段階と対応するリーダーシップスタイル
発達段階 | 部下の特徴 | 適切なリーダーシップスタイル | 具体的アプローチ |
---|---|---|---|
D1 | 低能力・高意欲 | 指示型(S1) | 具体的な指示と密な管理 |
D2 | 中程度能力・低意欲 | コーチ型(S2) | 指示と激励の両立 |
D3 | 高能力・変動する意欲 | 支援型(S3) | 意思決定への参加促進 |
D4 | 高能力・高意欲 | 委任型(S4) | 権限委譲と見守り |
D1段階:低能力・高意欲
新入社員や新しい業務に取り組む部下が該当します。やる気は十分にあるものの、必要なスキルや知識が不足している状態です。この段階では指示型(S1)のリーダーシップが効果的で、具体的な指示と密な管理により、部下が迷うことなく業務を遂行できるようサポートします。
D2段階:中程度能力・低意欲
ある程度のスキルは身につけたものの、困難に直面してモチベーションが低下している状態です。この段階ではコーチ型(S2)のアプローチが重要で、指示と激励を両立させながら、部下の意欲を回復させつつ能力向上をサポートします。
D3段階:高能力・変動する意欲
業務遂行に必要な能力は十分に備えているものの、自信の欠如や責任への不安により意欲が不安定な状態です。支援型(S3)のリーダーシップにより、意思決定への参加を促進し、部下の自主性と責任感を育てることが効果的です。
D4段階:高能力・高意欲
業務に必要な能力と高いモチベーションを兼ね備えた、最も成熟した状態です。この段階では委任型(S4)のスタイルが適しており、権限委譲と適度な見守りにより、部下の自立性を最大限に活用しながら成果を上げることができます。
研修での実践的活用
部下診断スキルの向上
管理職が部下一人ひとりの能力と意欲を正確に把握する方法を学びます。これには、定期的な1on1面談の実施方法や、業務の観察ポイントなどが含まれます。
スタイル切り替えの練習
ロールプレイング形式で、異なる発達段階にある部下への対応を実践します。特に、同じ部下でも業務内容によって発達段階が変わることを理解し、柔軟な対応力を身につけます。
成長促進の技術習得
部下をより高い発達段階へと導くための具体的なテクニックを学習します。これには、段階的な責任付与の方法や、適切なフィードバックの与え方などが含まれます。
PM理論とSL理論の統合的活用
両理論の相乗効果
PM理論とSL理論を組み合わせることで、より精度の高いリーダーシップを発揮できます。
PM理論が「何をするか」を示すのに対し、SL理論は「どのようにするか」を提供するため、相互補完的な関係にあります。
統合研修プログラムの設計
段階的学習アプローチ
- 基礎理解段階:両理論の概念と特徴を個別に学習
- 統合理解段階:2つの理論の関連性と相乗効果を理解
- 実践応用段階:複合的なケーススタディによる演習
- 職場実践段階:実際の職場での適用と振り返り
実践事例の紹介
一般的に、製造業のある中小企業では、PM理論で管理職の基本姿勢を確立した後、SL理論を用いて個別の部下指導を強化した結果、チーム生産性が25%向上し、離職率も大幅に減少したケースが報告されています。
効果的な組み合わせパターン
状況 | PM理論の活用 | SL理論の活用 | 期待される効果 |
---|---|---|---|
新人指導時 | P機能中心 | 指示型スタイル | 早期戦力化 |
中堅社員育成 | PM機能バランス | コーチ型・支援型 | 自立性向上 |
ベテラン活用 | M機能重視 | 委任型スタイル | モチベーション維持 |
チーム再建時 | PM機能強化 | 状況応じた柔軟対応 | 組織力向上 |
実装時の成功要因と注意点
研修設計における重要ポイント
段階的な実装計画
理論の習得から実践応用まで、無理のないペースでの段階的導入が重要です。一般的に、理論理解に2-3か月、実践定着に6か月程度の期間を要することが多く見られます。
継続的なフォローアップ体制
研修実施後の定期的な振り返りセッションや、上司・同僚からのフィードバック収集システムの構築が成功の鍵となります。
効果測定の仕組み
✅ 定量的指標
・チームの生産性向上率
・部下の満足度スコア
・離職率の変化
・目標達成率の改善
✅ 定性的評価
・部下からの360度フィードバック
・管理職自身の自己評価の変化
・職場のコミュニケーション質の向上
よくある失敗パターンと対策
✅失敗パターン① 理論偏重による実践不足
理論学習に時間をかけすぎて実践機会が不足するケースです。
対策として、学習と実践を並行して進めるプログラム設計が効果的です。
✅失敗パターン② 一律適用による個別対応不足
すべての管理職に同じアプローチを適用してしまう失敗です。
個々の管理職の特性や職場環境を考慮したカスタマイズが必要です。
✅失敗パターン③ 短期的効果への過度な期待
理論の定着と行動変容には時間がかかることを理解し、長期的な視点での評価が重要です。
まとめ:PM理論・SL理論で実現する管理職研修の成功
PM理論とSL理論を活用した管理職研修は、中小企業における人材育成の課題を解決する強力な手法です。
✅ 重要なポイント
・PM理論でリーダーシップの基本軸を理解し、バランスの取れた管理スタイルを確立する
・SL理論で部下の成長段階に応じた適応的なマネジメントを実現する
・両理論の統合的活用により、より精度の高いリーダーシップを発揮する
・段階的な実装と継続的なフォローアップで確実な定着を図る
これらの理論に基づいた研修プログラムは、管理職の自己理解を深め、部下との関係性を改善し、最終的には組織全体のパフォーマンス向上につながります。
成功の鍵は、理論の理解にとどまらず、実際の職場での継続的な実践と改善にあります。人事担当者の皆様には、これらの理論を活用した体系的な研修プログラムの導入を強くお勧めします。
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