評価制度の歴史とトレンド

2023.03.23評価制度組織づくり

評価制度の歴史とトレンド

評価制度の歴史や成り立ちと最近のトレンドについて解説いたします。評価制度はこうあるべきという説がたくさんあります。過去の成り立ちを見ると、自社の評価制度においてあるべき姿がみえてくるのではないでしょうか。

評価制度の歴史

人々が働くようになった時代から評価制度は存在しています。古くは、古代エジプトのピラミッド建設時代にもありました。職人たちの能力に応じて階級制度が設けられ、報酬が支払われていました。また、古代ギリシャでは、競技大会で優勝した選手には報奨金が与えられました。これは、報酬に基づいた評価ともいえます。

近代的な評価制度は、産業革命以降に発展しました。工場での労働者の労働時間に基づく報酬から、業績に基づく報酬へと移行していきました。バイトの時給からインセンティブのある社員への移行とイメージができます。また、20世紀には、科学的な手法に基づく評価制度が導入されるようになりました。

工業時代の評価

アメリカ合衆国では、生産性向上のための労働者評価制度が導入されました。(1913年:タイム・アンド・モーション研究を行うフレデリック・テイラーによって)この制度では、労働者の能力や経験に応じて報酬が決定されました。

タイム・アンド・モーション研究は、労働者の動作を細かく分析し、仕事の効率化や生産性の向上を図るための研究手法です。工業生産において大きな影響を与えました。タイム・アンド・モーション研究では、作業行程を分解し、それぞれの作業にかかる時間や必要な動作を詳細に調べます。その上で、動作の効率化や作業方法の改善を行い、生産性や品質の向上を図ります。

具体的には、研究者が仕事現場に赴き、労働者の作業をリアルタイムで観察・計測します。その情報を元に、その結果を分析します。現代でも生産管理の効率化のためにストップウォッチを用いて計測しています。作業時間の短縮や作業方法の改善など、生産性向上に貢献しています。

タイム・アンド・モーション研究は、工業生産の効率化に大きく貢献しました。同時に、労働者の労働環境の悪化や作業負荷の増大など、副作用ももたらしました。そのため、現代では、従業員の生産性向上と労働環境の改善の両立が求められるようになっています。

評価制度の大変革であるMBO

1950年代には、管理職の能力や業績に基づく評価制度であるマネジメント・バイ・オブジェクティブズ(MBO)が提唱されました。ジョージ・ベネスとA.I.デイビスが原案で、ピーター・ドラッカーによって発展された経営手法です。この制度では、目標設定と評価が密接に結びついていることが特徴です。

MBOでは、組織や部署ごとに目標を設定し、それらを達成するための戦略や手段を検討・実行します。目標設定には、上司と部下の双方が参加し、合意形成を図ります。また、目標の達成度合いを定期的に評価し、改善や補正を行うことも特徴の一つです。

MBOのメリットは、以下のような点が挙げられます。

・目標に集中できる:明確な目標が設定されることで、組織全体が同じ方向に向かって進むことができます。ベクトルを合わせるのに目標を手段として用いることが可能です。
・責任を明確にできる:目標設定に参加した全てのメンバーが、目標達成に向けて責任を持つことになります。進捗を確認することで責任所在を明らかにすることは、テコ入れがどこに必要なのかがわかるようになります。
・モチベーションが向上する:目標達成の過程で達成感を感じることができ、モチベーションが向上することが期待できます。達成感や充足感を得ることは次の目標を高いものに押し上げる要素となります。
・意思決定がスムーズになる:目標に基づいた意思決定ができるため、意思決定がスムーズになります。判断の基準が常に目標に貢献するものか否かになるのでシンプルな基準です。

一方、MBOには以下のようなデメリットもあります。

・目標の達成に偏重する:目標達成が全てではなく、目的を達成するための手段やプロセスも大切であることがあります。新人や業務に不慣れな社員を置き去りにしてしまう恐れがあります。
・目標設定が難しい:目標設定が具体的でなかったり、達成が難しい目標が設定されることがあるため、十分な準備や分析が必要です。中小企業において無理な経営計画のもとに作られた現場の目標はモチベーションを下げます。
・評価が不公平になる:目標の設定や評価に偏りが生じることがあり、不公平になる恐れがあります。優先するべきことが、能力に関係なく一律の目標にする公平性か、能力や経験を鑑みた平等性かが難しい点です。

MBOは、目標管理として広く用いられており、組織や個人の目標設定や評価に活用されています。

成果主義の台頭

1980年代には、成果主義に基づく評価制度が注目されるようになりました。個人の成果に基づいて評価を行う制度で、業務上の成果が評価指標となります。成果主義の導入により、生産性が向上し、企業の競争力が強化されたとされています。
目標管理、パフォーマンスマネジメント、報酬制度などの要素を含み、組織の業績向上や効率化を目的として導入されることが多いです。

成果主義は、個人のモチベーション向上や能力発揮を促します。当然ながら、業務の効率化を後押しします。具体的には、目標の設定やフィードバックを通じて、個人が自己管理や自己評価を行い、自己実現を図ることができます。また、成果に基づいた報酬や昇進制度を導入することで、個人の意欲や成果意識を高めることができます。

しかし、成果主義には、評価指標の適正性や偏りの問題が付随します。過剰な競争やストレスにさらされるケースも見受けられます。報酬や昇進による不公平感などの弊害が多くあります。弊害が多すぎて成果主義を辞めてしまった企業が続出した過去もあります。

そのため、成果主義を導入する際には、評価指標の適正性や透明性を確保し、個人の能力や成果だけでなく、チームワークや人間関係など、幅広い要素を評価することが重要です。また、報酬や昇進制度を公平かつ透明性を持って設計することも重要です。

最近のトレンド

現代においては、多様な評価制度が存在しています。例えば、360度評価やフィードバックを活用した評価制度があります。また、従業員のワークライフバランスを重視した評価制度などもあります。また、最近では、AIやビッグデータを活用した評価制度が注目を集めています。

しかし、企業文化や社員の価値観などによって大きく異なります。そのため、導入には慎重な検討が必要です。また、評価制度はあくまでも一つの手段です。従業員の能力や成果を正確に評価するためには、定期的な面談やフィードバック、業務環境の整備など、様々な要素が必要とされます。

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