三国志とキングダム世代マネジメント
2023.02.28若手育成組織づくり
キングダムというマンガをご存じでしょうか。紀元前の中国を舞台にした戦国時代のお話です。週刊ヤングジャンプにて2006年から連載が始まり、なんと累計9,500万部の大ヒット作品です。2019年には映画化されて、こちらも人気で3作品が上映されています。
社内の若手は口を揃えて「キングダム最高」と呼び名が高いです。LINEリサーチによると特に10代から30代に人気のようです。戦国ものでは珍しく、女性にも支持をされています。
浅井は本年で47歳です。いわゆる三国志世代です。三国志は1971年から1987年に出版された横山光輝の漫画が有名です。赤壁の戦いという戦争をテーマにした「レッドクリフ」という映画も人気を博しました。
弊社の若手社員が「キングダム最高なのでぜひ社長も読んでください」と熱烈に推奨されましたので、読破いたしました。しかし「三国志と比べたら足元にも及ばない」これが率直な感想でした。
マネジメント層である三国志世代(40-60歳)と、マネジメント対象者(15-35歳)であるキングダム世代。どこに価値観のギャップがあるのでしょうか。
この若手から支持されるキングダムを読み解くことで、若手社員のニーズを深堀できるのではと考えて、本日は筆をとりました。わかりやすくするために浅井なりの表現や解釈を用いるのと、両作品は漫画であるので、史実と違う点はご容赦ください。
三国志のあらすじ
・主人公 劉備玄徳がなぜ立ち上がったのか
農村出身で母想いの優しい青年が主人公です。劉備玄徳(りゅうびげんとく)です。後に蜀という国の皇帝になります。中国は3つの国、蜀・魏・呉に分かれ、その勢力を争います。
時代は西暦180年。時の中国では、大規模な飢饉や略奪する山賊や堕落した政治家によって混乱の只中にありました。そこで宗教の教祖が立ち上がります。当時の朝廷である後漢を倒そうと反乱を起こしました。それが黄巾の乱です。反乱者は黄色の頭巾をしていたことから、そのように名づけられました。しかし、彼らのやっていることは山賊などと全く変わらず、民たちは略奪、虐殺されていました。
それを見かねた劉備は関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)と義兄弟の契りを交わし、義勇軍を結成して黄巾賊を倒すため立ち上がりました。
この契は桃園の誓いと言われ「生まれは違えど死ぬときは一緒」という言葉で盃をかわしました。一蓮托生のあり方が描かれています。
・偉人とされている名軍師の孔明(こうめい)
劉備は名軍師である諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)を迎えるにあたって、三度訪ねました。一般的に目上であれば呼びつけるところですが、謙虚に丁重にそして誠実に足しげく通って、頭を下げました。そしてその誠実さに心を打たれ、孔明は劉備の家来になりました。後に孔明は、中国統一は難しく、三国に分けて平定するべしと提言し、孔明の言う通り三国でバランスが取れました。三国志の立役者であり、今でも偉人・賢人として名をはせています。
この三度訪れた「三顧の礼」は故事にもなっています。目上の人が格下の者のもとに三度も出向いてお願いをすることを意味しています。謙虚さや誠実さのエピソードといえるでしょう。
・関羽という神格化された武将
関羽は、人並み外れた武勇や義理を重んじたことで有名です。今では神格化されて、中華街などにいくと関羽の仏像があるほどです。
関羽の特徴的なエピソードとしては、やはり忠義のお話です。当時の敵国からも賞賛される武将でした。自分の上司(君主)である劉備の妻子を守るために、敵国に捕らわれてしまいます。しかし敵国である魏の曹操(そうそう)はどうしても関羽を自分の家来にしたかった。なので関羽を丁重に丁重にもてなすが、最後まで関羽は「君主の妻子を連れて帰ること」と「自分の主は劉備玄徳である」ということを譲りませんでした。
現代的に訳せば【どんなに好待遇のヘッドバンティングを受けても、自分の会社を裏切らず、自己犠牲によって会社のことを一番に考える】と受け取れます。
・子供より武将を大切にした劉備
あるとき、魏に攻められ、蜀の民衆の大半が曹軍に飲み込まれました。この中には、劉備の妻と嫡男の阿斗(あと)も含まれていました。趙雲という武将はこのことに気づくと、馬首を反転し、圧倒的勢力である曹軍の真っ只中に引き返します。
農家の井戸のそばに傷ついた夫人と夫人に守られた無傷の阿斗を見つけます。二人を救出したい趙雲でしたが、足手まといになることを怖れた夫人は、井戸に身を投げます。趙雲は、衝撃に打ちのめされながらも阿斗を胸に抱くと、再び馬に飛び乗り、劉備軍を目指して包囲網を切り抜けました。
無事に劉備に阿斗を渡したときに、劉備は阿斗を投げ捨てました。驚いた趙雲に劉備は言います「兄弟は手足の如く妻子は衣服の如し」訳すとすれば「家族は取り換えが聞くが、あなたは取り換えがきかない存在だ」です。自分の子供のために命を投げ出す家来は、自分の子供より尊い存在であるということです。
・泣いて馬謖を斬る
蜀の武将の馬謖(ばしょく)が、軍師(諸葛亮公明)の指示に背いて敗戦を招きました。この責任をとり馬謖は処刑されました。
愛弟子の馬謖の処刑に踏み切り、諸葛亮は涙を流しました。この報を聞いた劉備も「そこまでしなくてもよかったのでは」と涙を流しました。「馬謖ほどの有能な将を」と彼を惜しみ反対する意見が多数ありましたが、諸葛亮は「軍律の遵守が最優先」と再び涙を流しながら答えたというエピソードがあります。
最近でも有能であってもルールを逸脱した社員を解雇する際に「泣いて〇〇を斬る」という表現が用いられます。個人より全体が重要であることが描かれています。
三国志まとめ
自己犠牲をいとわない忠誠心。個人主義ではなく全体主義。
キングダムのあらすじ
三国志は君主(トップ)が主人公ですが、キングダムの主人公は家来の武将です。貧しい生まれの信(しん)という少年が、いつかは大将軍になることを夢見て、戦国で活躍するサクセスストーリーです。
時代は三国志より400年ほど昔の紀元前300年。古代中国の春秋戦国時代末期における、戦国七雄と言われた7つの国の争乱が背景になっています。第31代秦王である嬴政(えいせい)は、のちに中華統一を実現し、始皇帝となります。中華統一までのプロセスが本作品です(連載中)
超ざっくり要約
・戦争孤児であった信は大将軍を目指す。
共に戦争孤児で親友であった仲間が朝廷に徴用される。
王に顔が似ていたことから王の影武者としてであった。
信もいずれ徴用されることを夢見ていた。
・王(嬴政)が権力争いで抹殺されるところを助ける。
親友が王に変わり殺されてしまう。
王は少年であり、権力争いで抹殺されようとしていた。
親友からのメッセージを託された信は、刺客を打ち破り、王を助ける。
反乱軍に対抗するため、他民族(山の民)に会いにいく。
その他民族は遥か昔は信頼関係があったが、いつしか秦側が差別や排除をしていた。
しかし、王は他民族の王に「王のあり方」を説いて、協力を得る。
これによって反乱軍を成敗した。信頼関係の美しさが描かれている。
・敵が味方になる
王を抹殺しようとした凄腕の刺客(羌瘣:きょうかい)が現れる。
刺客として育て上げられてきた心を信が心を解きほぐす。
後に信の右腕的な存在になる。
信の仲間(河了貂:かりょうてん)は役に立たない自分をあらためようと、軍略を学びに、信のもとを離れる。
信はすごい将軍の元で修行をする。
仲間のために自分が何ができるかを模索する心が描かれている。
・敵国六国がまとまって秦を滅ぼそうとする。
六国が連合軍で秦に侵攻をする。
最後の砦には軍がいなかったが、王が民を鼓舞して迎え撃つ。
また他民族がその窮地を救う。
一致団結の美しさが描かれている。
以下、強い敵が現れても仲間に助けられて倒すがリピートするために、略。
「おい!浅井!キングダムはもっと語れるだろう!あのシーンがないじゃないか」というお叱りの声が聞こえます。すみません。三国志世代の浅井にはキングダムを魅力的に伝えるのが難しい……
キングダムまとめ
とにかく仲間。キングダムには家来という言葉が出てきません。王と家来の関係性である嬴政と信は友達のように描かれています。そして戦いの強さは、それぞれが背負っている仲間の想いに比例すると定義しています。
三国志とキングダムの違い
三国志は主従の美しさ。キングダムは仲間の絆。
企業文化に置き換えると
三国志的な企業は、会社が絶対であり、上司が絶対。自己犠牲を美徳とする。だから社員は、サービス残業を美徳とする。会社は忠義を尽くす社員を絶対に裏切らない。よって終身雇用。
キングダム的な企業は、上下ではなくチーム。仲間からの信頼が最も重要。共に成長することが喜び。正義があれば、上にものを申すのを是としている。よってナレッジ共有、ビジョン共有組織。
さて、だいぶ極端に、またアンバランスに語りましたが、若手がなぜキングダムを大好きなのか少しは理解が深まったかと思います。キングダム方式で組織運営するなら、個人成果ではなくチーム成果で評価をする。相互理解を深められるようなコミュニケーション施策に取り組む。このあたりが若手のニーズを満たすことになるでしょう。
今回はあくまでも参考程度にしてください。
三国志とキングダム世代マネジメントのあとがき(くだらないです)
秦の始皇帝は、中国でバラバラだった長さや重さなどあらゆるものの規格を統一した初めての皇帝でした。皇帝と言う呼称も秦の始皇帝が作りました。それまでは王が一般的です。王は人のトップ。さらに王の上になろうとして、皇帝と言う言葉を作りましたが、皇帝とは神という意味です。
秦は2代で滅びます。その際にできた言葉が「馬鹿」「阿保」。始皇帝が病で無くなり、側近がその権力を握るためのある行動をとりました。鹿を連れてきて「これは馬だ」と名言しました。それに意を唱えた人間をつぎつぎ斬ったという話があります。なのでばかげている話として「馬鹿」が生まれました。
そんな馬鹿なことを繰り返していたので、ついには秦が滅亡します。その時に焼かれた大建築物が阿房宮(あぼうきゅう)。これが「あほ」の由来です。
有名な四字熟語
秦が倒れて、項羽と劉邦の時代になります。項羽は楚の国の将軍。劉邦は農民から立ち上がったヒーローです。最終的に劉邦は項羽を追い詰めて、漢王朝を興します。
項羽を追い詰めたときに、項羽の四面から楚の歌が聞こえて、項羽は諦めたと言われています。自分を取り囲む敵から自分の国の歌が聞こえるということは、すでに敵に取りこまれて、詰んでいると思ったのでしょう。これが「四面楚歌」です。漢が興隆しましたがやがて衰え、そして三国志の時代に移ります。
ちなみに、清の最後の皇帝、映画「ラストエンペラー」も面白いですよね!
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