コラム

戦略人事の定義と従来の人事管理との違い

戦略人事とは、企業の経営戦略と連動した人事施策を策定・実行することで、目標の達成を人材面から支援する考え方です。従来の人事管理が主に採用・労務管理・給与計算といった管理業務を担ってきたのに対し、戦略人事では人材を経営資源として戦略的に活用し、企業価値の向上に貢献することを目指します。人事部門が経営戦略の立案段階から参画が重要です。

「どのような人材をどう活用すれば経営目標を達成できるか」という視点で人材戦略を構築します。

なぜ今、戦略人事が注目されているのか

背景には、デジタル化やグローバル化による競争環境の激化、働き方の多様化、そして人材獲得競争の激化があります。

企業の競争力の源泉が有形資産から無形資産、特に人的資本へとシフトする中で、人材を戦略的に活用することの重要性が高まっているのが要因です。

戦略人事がもたらす3つのメリット

戦略人事の実践によって得られるメリットは以下の３つです。
1. 経営目標達成への直接的貢献
2. 人材の最適配置と生産性向上
3. 従業員エンゲージメントの向上

1. 経営目標達成への直接的貢献

最大のメリットは、人事施策が経営目標達成に直結することです。
例えば、新規事業展開を目指す企業では、必要なスキルを持つ人材の採用・育成計画を先行して立案し、事業の立ち上げをスムーズに進めることが可能です。人事部門が経営戦略を深く理解し、その実現に必要な人材要件を明確にすることで、適材適所の人材配置が可能になります。

2. 人材の最適配置と生産性向上

戦略人事では、一人ひとりの能力や特性を把握した配置を重視します。これにより、個人の能力が最大限に発揮され、組織全体の生産性向上につながります。また、戦略的な人材育成により、将来必要となる能力の開発を計画的に進めることができます。結果的に中長期的な競争力の強化にも寄与します。

3. 従業員エンゲージメントの向上

戦略人事の実践により、従業員は自分の役割が会社の目標達成にどう貢献しているかを理解しやすくなります。この「目的意識」は従業員のエンゲージメント向上に大きく寄与します。エンゲージメントが低いことにより、GDPが減少しているというデータもございます。

戦略人事を実践するための5つのステップ

効果的に実践するためには、以下の5つのステップが重要です。
1. 経営戦略との整合性確保
2. データに基づく人材分析と意思決定
3. 戦略的採用・育成・配置の実施
4. パフォーマンス評価システムの再構築
5. 組織文化の戦略的形成

1. 経営戦略との整合性確保

第一歩は、経営戦略を深く理解することです。経営陣との対話を通じて、中長期的な事業目標や成長戦略を把握。事業目標を実現するために必要な人材要件の明確化をします。人事戦略と経営戦略の整合性がなければ、いくら優れた人事施策も効果を発揮できません。

2. データに基づく人材分析と意思決定

感覚や経験だけでなく、客観的なデータを活用して人材に関する意思決定を行うことが重要です。従業員データの分析を通じてあらゆる測定が必要です。

✅組織内の人材分布
✅スキルギャップ
✅育成ニーズなどを可視化

これらを分析しすることで戦略的な人材配置や育成計画に活かします。
ピープルアナリティクスのツールを導入し、データに基づいて意思決定されることを推奨します。

3. 戦略的採用・育成・配置の実施

現在だけでなく、将来必要となる人材像を見据えた採用・育成・配置を行います。特に重要なのは、戦略的ポジションの特定とそれに適した人材の確保です。ハイポテンシャル人材の早期発掘と計画的育成により、組織全体で『リーダー育成の仕組み』を構築することも重要な役割です。

4. パフォーマンス評価システムの再構築

単に過去の実績を評価するだけでなく、企業の戦略目標達成に向けた貢献度を評価する仕組みへの転換が求められます。
評価指標には、結果成果だけでなく、イノベーション創出や組織開発など、中長期的な企業価値向上につながる要素も含めることが効果的です。

5. 組織文化の戦略的形成

最後に、戦略人事では組織文化を意図的に形成することも重要です。経営戦略の実現に必要な行動様式や価値観を定義、全社に浸透させる取り組みを行います。イノベーション志向の戦略を持つ企業であれば、チャレンジを称賛し失敗から学ぶ文化を醸成することで戦略的な人事戦略につながります。

まとめ

従来の管理型人事から脱却が求められます。
目標達成を人材面から支援することで以下の3つの効果があります。

✅経営への直接的貢献
✅人材の最適活用
✅従業員エンゲージメントの向上

効果的な戦略人事を実践するためには、前述した5つのステップが重要です。戦略人事は単なるトレンドではなく、持続的な成長のための必須要素といえます。人事担当者と経営者が協働し、長期的視点で人材戦略を構築・実行することで、激しい環境変化の中でも企業は競争力を維持・強化することができます。今こそ、あなたの組織も戦略人事への転換を検討すべき時なのかもしれません。

最後に関連記事もご紹介いたします。
【ESサーベイ完全ガイド:https://pdca-school.jp/column/9680