なぜ若手は仕事をすぐに辞めるのか?
2022.11.18若手育成組織づくり
若手が辞める。将来を担うべき若手社員が育たない。このようなお悩みは少なくありません。
新卒採用(2020年卒採用)における1人当たりの平均採用コストは93.6万円。2018年度は71.5万円で増加傾向にあります。中途採用では平均採用コストは103.3万円。2018年度は83.0万円。新卒も中途もいずれも採用コストが増加しています。(リクルート調べ)
これだけのコストをかけて採用し、成果が出るまで支出した給与もコストと捉えると、投資分を回収せずに離職が起こると、会社としては大打撃です。
コストだけにとどまらず、離職はまわりへの影響も懸念されますし、次のリーダー候補も空洞化してしまいます。
今回は若手が離職する理由の本音と建前について解説いたします。
辞める理由は全部ウソ
若手が辞める際に口からでる理由はほぼウソと言っても良いでしょう。心情を察すれば、仕事がきついからとか上司が嫌いという理由は言いにくいものです。だから、違う言い訳を準備します。主に「地元に帰る」「家族の病気や事情」「学生時代にあきらめた夢を今一度チャレンジしたい」等があります。
こうした表面的な退職理由を本当の理由だと信じ込んでいる限りは、根本的な解決ができません。例えば土日出勤の仕事をしていて「友達と時間が合わないので、土日休みの仕事に転職したい」という退職理由も本音ではありません。それは根本的な退職動機から派生した会社の嫌なことを表現しているだけです。
浅井のもとに若手から「会社を辞めたいのですが、なんと言えばよいですか?」という相談も増えています。また昨今では、その理由を伝えるのも億劫で退職代行を利用するケースも頻出してきました。
本当の退職理由その1「あいつが嫌い」
直近の経産省データによると離職理由のワースト1位は「人間関係」です。しかしこの事実は会社側では把握できません。退職の話の中で「上司が嫌いです」「同僚とそりが合いません」とは良いにくいのは間違いありません。
職場における人間関係や信頼関係は一朝一夕で創り上げられるものではありません。逆にいえばこじれたものを瞬間的に是正する方法もありません。
人間というものは、仕事自体に面白味を感じていても、人間関係に悩みがあればパフォーマンスは発揮できません。また、人間関係が良好であれば、仕事に少々難があっても乗り越えられたりします。すなわち、社内に理解者や味方、仲間がいるかいないかがカギになります。
新卒に限定していえば、同期入社の人数によっても離職率が変わります。100以上を採用する企業では離職率が30%台ですが、5人未満ですと離職率は60%に跳ね上がります。もちろん採用人数が多いということは、それだけの受け入れ体制や教育施策が整っているという側面もあると思います。
しかし理由はそれだけではなく、同期が多ければ多いほど、相談できる仲間に出会える確率も高まります。若手の早期離職予防は、採用人数の少ない中小企業においては重点的な施策であります。
解決策としては、メンターメンティ制度(指導者と指導される者を設定する)や定期面談、人事部主導のメンタルケア面談、社内イベントなどがあります。
本当の退職理由その2「上司のようになりたくない」
「5年後の自分があんな感じだと想像したらゾッとする」
「上司はいつも大変そうでああいう風にはなりたくない」
Z世代の特徴としてスキルアップやキャリアアップ、成長欲求が強くあります。一方で、責任を追いたくないという傾向もあります。生活のための仕事として捉えていない若い世代は、将来自分がどうなれるのかに強い関心があります。
中小企業の管理職はプレイヤーの責務も担いながら、その責務は軽減されません。管理職としての役割も同時に担います。当然、チームの業績が悪ければ上から詰められます。さらに、下からも不平不満が突き上げられて、まさに板挟みの状態です。
そのような状況を部下はしっかりと見ていて、管理職が大変そうであればあるほど、将来への希望が閉ざされます。
上司を尊敬できないという若手社員の意見も多くあります。上司に改善案を上申しても取り入ってもらえない。いつも上司が仕事を押し付けてくる。などなど、信頼関係が崩壊しているケースもあります。このような上司に対する不信は、コミュニケーション不足が要因です。または、上司がプレイヤーの仕事を優先してしまうことによって現れるのではないでしょうか。
解決策としては、管理職の職域や職務の定義をしましょう。管理職としての仕事を評価される制度設計が重要になります。
本当の退職理由その3「優秀な先輩が辞めて不安になる」
2-6-2の法則というものがあります。社員の2割は優秀で、その会社の業績の8割を担っている。一番多い層の6割は良くも悪くもなく、残りの2割はお荷物社員と言う考え方です。
そして昨今、人材の流動化が少しづつですが進み、転職のハードルも下がりました。どこの企業も人手不足で、転職活動は昔と比べて転職者にとっては気持ち的にも楽になりました。
会社の業績を担う優秀な層である2割が転職をしてしまいます。優秀なので転職によって年収が上がる見込みがあるためでもあります。また、優秀層だからこそ、会社の未来や経営に不満を持つ傾向があります。6割社員はゆでガエル状態であり、2割のお荷物社員は行き場がないので、留まります。
しかし、6割の一般社員の中で、優秀な先輩社員が辞めていく姿を見て「優秀な先輩が辞めるということはこの会社に未来はないということだろうか」「理解者である面倒見の良い先輩がいなくなって自分は仕事が続けられるだろうか」と不安になり、本来はゆでガエルなのに、感化されて連鎖的に離職が続くという現象があります。
【参考】ゆでガエル
カエルはいきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れて水温を少しづつ上げていくと、温度が上がっていることに気づかず、逃げ出すタイミングを失い最後には死んでしまうという作り話。現状の変化に気づかない、変化に気づいていても変えられないということを表すシーンで使われる。
入社3年から7年目のいわゆる中堅社員がいなくなると、管理職と若手の世代間ギャップが大きくなってしまいます。この中堅の空洞化は若手の定着率に直結します。若手を育成するためにも、中堅社員へのテコ入れが必要となります。
解決策としては、中堅社員のリテンション効果をあげるキャリアビジョンの策地や、中堅社員からの抜擢人事や職務拡大が効果的です。
人によって離職が起き、人によって離職が予防されます。
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