【2026年】法改正への対応は整えた。でも、それだけで本当に大丈夫?
2026.03.03

2026年度に向けて、人事・労務担当者が対応を迫られる大きな法改正が3つあります。本コラムでは、これらの改正内容を詳しく解説するとともに、単に制度を整えるだけでは不十分な、現場で陥りがちな「落とし穴」とその対策についてお伝えします。
1.カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化
カスハラの現状と背景
厚生労働省のデータによると、セクハラやパワハラが研修などの効果で減少傾向にある一方、カスハラは年々増加しています。
経験を持つ人の割合
転職意欲(未経験者比)
企業割合
カスハラの内容は、暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求、著しい迷惑行為など多岐にわたります。
企業に求められる対応とリスク
企業には以下の措置を講じることが求められます。対策を怠った場合、行政からの助言・指導にとどまらず、勧告や企業名の公表が行われる可能性があります。これは企業のブランドイメージを著しく損なうだけでなく、従業員の離職にも直結します。
・相談窓口の整備
・ハラスメント研修の実施
・迅速な対応フローの構築
「落とし穴」と対策のポイント
対策として有効なのは、単なるマニュアル整備だけでなく、「クレーム応対研修」の強化です。カスハラと正当なクレームの線引きを明確にすること、そして従業員が一人で抱え込まずに上司や組織が組織的に対応できる体制を作ることが重要です。
2.女性活躍推進法の改正:開示義務の拡大
主な改正内容
これまで努力義務だった中堅・中小企業でも情報の公表が義務化されます。
| 企業規模 | 義務化される公表項目 |
|---|---|
| 101名〜300名 | 男女の賃金差異・女性管理職比率(新規義務化) |
| 301名以上 | 男女の賃金差異(既存) + 女性管理職比率(新規追加) |
情報の公表と採用力への影響
企業は、職業生活に関する機会提供や雇用環境の整備に関する項目(採用倍率、有給取得率、育休取得率、残業時間など)の中から選択して公表する必要があります。
3.ストレスチェック制度の義務化:全事業所への拡大
制度の目的と対象者
これまで50人未満の事業場では努力義務だったものが、全企業で義務となります。この制度は、従業員自身のセルフケアを促すとともに、高ストレス者の早期発見、職場環境の改善、メンタル不調の未然防止を目的としています。
【対象者】
・正社員
・所定労働時間の3/4以上働くパート、アルバイト
・契約期間1年以上の契約社員
深刻なメンタル不調の現状
休業・退職が発生した事業所
特に若手社員において、入社数ヶ月で適応障害を発症するケースも増えており、早期発見の仕組み作りは急務です。
【重要】法改正対応に潜む「最大の落とし穴」
これらの法改正、特にストレスチェックやハラスメント対策を進める上で、人事が最も注意すべきなのが「管理職の萎縮」による生産性の低下です。
「言えない・言わない・優しい」管理職の増加
「高ストレス者を出してはいけない」「ハラスメントと言われるのが怖い」というプレッシャーから、管理職が必要な指導を避けてしまう「指導回避」が起こっています。その結果、職場が「ゆるく」なり、部下が成長を実感できずに離職するという逆転現象が起きています。
若手のニーズ:実は「はっきり言ってほしい」が76%
と考える若手社員
彼らは、自分では気づけない点に気づき、成長したいという意欲を持っています。フィードバックがない「ネオブラック企業(ホワイトすぎて成長できない職場)」を嘆く声すらあるのです。
目指すべきは「学習する職場」
目指すべきは、ストレッチゾーンを意識した職場環境です。
少し背伸びが必要な目標を与える
まとめ:制度を「形」だけで終わらせないために
2026年の法改正への対応は、単に書類を整備したりシステムを導入したりするだけでは不十分です。大切なのは、「適切な指導ができる管理職の育成」をセットで行うことです。
部下の行動や結果に対して、事実に基づいたフィードバックを行う「SBIIモデル」などの手法を社内に普及させることも一つの解決策です。
☑ カスハラ対策の義務化は2026年12月までに施行。相談窓口・研修・対応フローの構築を
☑ 女性活躍推進法改正で101名以上の企業に女性管理職比率の公表が義務化(2026年4月)
☑ ストレスチェックが全事業所に義務化。メンタル不調の早期発見体制を
☑ 法改正対応の「最大の落とし穴」は管理職の指導回避による組織の停滞
☑ 若手の76%は「はっきり言ってほしい」。適切な指導ができる管理職の育成をセットで
制度の導入を「守り」の対応で終わらせるのではなく、組織を強くする「攻め」の機会と捉え、現場の指導力向上に取り組んでいきましょう。
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