コラム記事

NTTの人材育成戦略の全体像と成功要因

NTTグループの人材育成の基本方針

日本を代表する通信・ITサービス企業であるNTTグループは、国内外に約30万人の従業員を抱え、多様なビジネス領域で事業を展開しています。このような大規模組織において、持続的な成長を実現するためには体系的な人材育成が不可欠です。特に昨今のDXの加速により、NTTの人材育成戦略も進化しています。

NTTは「自律型人材の育成」を基本方針としています。自ら学び、考え、行動できる人材を育てることで、変化の激しいビジネス環境にも対応できる組織を目指しています。具体的には、階層別研修プログラム、専門スキル育成、グローバル人材育成の3つの柱を中心にプログラムが構成されています。これらは互いに連携し、社員のキャリアステージに応じた最適な学習機会を提供しています。

DX時代に対応する人材育成の特徴

DX時代に対応するためのNTTの人材育成には、3つの特徴があります。デジタルスキルの体系的習得、実践型学習の重視、そしてオンデマンド学習環境の整備です。同社の「デジタル人材認定制度」では、DX向けのシステム開発に必要な人財像を、NTTデータが定義した6段階のレベルに分けて認定を行い、社員の能力を可視化しています。また座学だけでなく実践の場も重視しています。時間や場所を選ばず学習できるオンライン環境も整備されています。

NTTの人材育成が成功している主な要因は4つあります。経営戦略との連動、継続的な投資、マネジメント層の関与、評価・報酬制度との連携です。特に経営戦略と人材育成の連動性は高く、中期経営計画の中で人材育成の目標が明確に設定されています。

自社への応用と導入ステップ

他の企業がNTTの人材育成から学べる重要なポイントとして、まず経営ビジョンと人材育成の一体化が挙げられます。人材育成を単なる研修プログラムではなく、経営戦略の一部として位置づけることで効果が高まります。次に、デジタルと対面のハイブリッド学習環境の構築です。NTTはオンライン研修とリアルな実践の場をバランスよく組み合わせています。さらに、自律的な学びを促進する文化づくりも重要です。NTTでは「自律した個」の育成を重視しています。専門性に基づく昇格制度を含め、社員の成長を評価しキャリア開発につなげる取り組みを行っています。

大企業のNTTの取り組みをそのまま中小企業に適用することは難しいです。しかし、その本質を理解し自社に合わせた形で導入することは可能です。具体的な導入ステップは以下の通りです。

ステップ1：スキルマップの作成
自社にとって重要なスキルを洗い出し、現在のレベルと目標レベルを可視化します。NTTのデジタル人材認定制度のようなシンプルな仕組みを取り入れることで、社員の成長を見える化できます。

ステップ2：段階的な研修体系の構築
限られた予算の中でも、階層別に必要な研修を整理し、外部研修や公的支援制度も活用しながら効率的な研修体系を構築します。

また社内メンター制度の導入も効果的です。多くの大企業では経験者から若手への知識移転の仕組みを整えています。この考え方は、中小企業でも応用できます。加えて、定期的な成果発表会や社内コンペなど、学びの成果を評価する場を設けることも学習意欲を高める効果があります。

人材育成における経営者・人事担当者の役割

NTTの事例からも明らかなように、経営者や人事担当者の役割は非常に重要です。経営者は人材育成を経営戦略の中核に位置づけ、人材育成への投資を確保する必要があります。また自ら学ぶ姿勢を示すことで、組織文化の形成に貢献します。

一方、人事担当者は事業戦略と人材戦略をつなぐ翻訳者としての役割を担います。育成プログラムの企画・運営・評価のサイクルを回し、最新の学習手法について研究し導入することが求められます。NTTの人事部門は単なる研修運営部署ではなく、戦略的人材開発の中心として機能しています。

デジタル人材育成の今後の展望

DXの進展に伴い、今後の人材育成はさらに変化していきます。AIと人間の共存を前提とした育成がますます重要になり、人間にしかできない創造性や判断力を育む育成プログラムに注力する必要があります。

またパーソナライズされた学習体験の提供も今後のトレンドです。一人ひとりの特性や学習進度に合わせた学習プログラムが主流になっていくでしょう。さらに越境的な学びの場の創出も重要で、NTTも社外との協働プロジェクトを通じた人材育成を強化しています。

まとめ：NTTの人材育成に見る企業成長の秘訣

NTTの人材育成戦略は、経営戦略と密接に連動した組織的な取り組みです。自律型人材の育成を基本方針とし、3つの柱を軸に体系的なプログラムを構築しています。DX時代に対応するため、デジタルスキルの体系的習得、実践型学習、オンデマンド学習環境の整備などを進め、経営戦略との連動、継続的な投資、マネジメント層の関与、評価・報酬制度との連携により成功を収めています。

NTTの人材育成から学べる重要なポイントは、経営ビジョンと人材育成の一体化、ハイブリッド学習環境の構築、自律的な学びを促進する文化づくりです。中小企業でも、自社のスケールに合わせた形で導入することが可能です。

今後の人材育成においては、AIと人間の共存を前提とした育成、パーソナライズされた学習体験、越境的な学びの場がさらに重要になります。変化の激しいビジネス環境において、人材育成は最も重要な経営課題の一つです。自社ならではの人材育成システムを構築し、持続的な競争力の源泉としていきましょう。

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【中小企業版】新入社員の育成方法についてはこちらをご参考ください。
⇒記事：https://pdca-school.jp/column/3254