コラム記事

多くの企業が競合との差別化に苦心する現代、「なぜ自社が存在するのか」という根本的な問いに答えるパーパス・ブランディングが注目されています。本記事では基本から実践法までを解説します。

パーパス・ブランディングの基本

パーパス・ブランディングとは何か

パーパス・ブランディングとは、企業の存在意義（パーパス）を中心に据えたブランディング戦略です。製品の機能や特徴だけでなく、「なぜその企業が存在するのか」という問いに答え、それを顧客に伝える取り組みです。
「利益を上げること」は重要ですが、パーパス・ブランディングでは社会的価値創造や問題解決への貢献を明確に打ち出します。企業のミッションを深く掘り下げ、顧客との感情的なつながりを構築します。

従来のブランディングとの違い

従来のブランディングが製品の特徴や価格に焦点を当てていたのに対し、パーパス・ブランディングは企業の存在意義に焦点を当てます。

3つのメリット

パーパス・ブランディングを実践することで、以下のメリットが得られます。

✅顧客ロイヤルティの向上：企業の存在意義に共感した顧客は長期的なファンになりやすく、価格競争に巻き込まれにくいビジネスの構築につながります。
✅従業員のモチベーション向上：明確な企業の存在意義は従業員の仕事への誇りにつながり、生産性向上や離職率の低下をもたらします。
✅市場での差別化：類似した製品やサービスが溢れる中、企業の存在意義は強力な差別化要因となります。

実践方法

自社の存在意義を見つける方法

パーパス・ブランディングの第一歩は、自社の存在意義を明確にすることです。以下のステップで見つけることができます。

①創業の原点に立ち返る：なぜこの会社が設立されたのか、創業者の想いや解決したかった社会課題を再確認します。
②ステークホルダーとの対話：従業員、顧客、取引先から、自社への期待や価値を聞き取ります。
③自社の強みと社会課題の接点を探る：自社の強みがどのような社会課題解決に貢献できるか検討します。
④シンプルな言葉にする：誰もが理解できる言葉でパーパスを表現します。

成功事例

多くの企業がパーパス・ブランディングを実践し、成功を収めています。

パタゴニアの成功
「環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える」というパーパスを掲げ、環境保護活動と事業を一体化させています。
消費主義に逆行する取り組みも行っていますが、それが強固なファン層を形成しています。

ユニリーバの成功
「持続可能な生活を当たり前のものにする」というパーパスのもと、全ブランドに社会的・環境的目標を設定。消費者からの支持と従業員満足度を向上させています。

実践の具体的ステップ

パーパス・ブランディングを実践するための具体的なステップは以下の通りです。

①パーパスの策定：自社の存在意義を明確化します。
②組織内への浸透：全従業員がパーパスを理解し、共感することが重要です。研修やワークショップを通じて浸透を図ります。
③事業活動との一貫性確保：製品開発、サービス提供、マーケティング活動など全ての活動がパーパスに沿っているか確認します。
④ストーリーテリング：パーパスを具体的なストーリーとして伝えることで、共感を生み出します。

注意点

パーパス・ブランディングを成功させるためには、以下の点に注意が必要です。

✅真実性の確保：パーパスは単なるスローガンではなく、真に企業が目指す方向性である必要があります。表面的なメッセージだけでは、信頼を損なう可能性があります。
✅長期的視点の維持：短期的な利益のために、パーパスに反する判断をしないよう注意します。長期的な価値創造のために一貫性を保つことが重要です。

これからの展望

今後、パーパス・ブランディングはさらに重要性を増していくでしょう。
特にZ世代やミレニアル世代が消費の中心となる中、企業の社会的責任や存在意義への関心は高まっています。
デジタル技術の発展により、企業活動の透明性が高まり、言葉だけのパーパスは通用しなくなります。実際の行動と発信内容の一致がこれまで以上に求められるでしょう。

まとめ

パーパス・ブランディングは、単なるマーケティング手法を超えた、企業経営の本質に関わる考え方です。根本は「なぜその企業が存在するのか」という問いにあります。その問いに向き合い社会的価値と経済的価値の両立を目指す取り組みです。

自社のパーパスを見つけるためには、創業の原点への立ち返りが第１ステップです。次にステークホルダーとの対話を通じて、自社の強みと社会課題の接点を探りましょう。そして、見つけたパーパスを組織内に浸透させ、全ての事業活動と一貫性を持たせることが成功の鍵となります。

パタゴニアやユニリーバなどの成功事例からも分かるように、真に社会的価値を創造するパーパス・ブランディングは、持続可能なビジネスの構築につながります。

消費者の価値観が変化し、社会課題が複雑化する現代において、企業の存在意義を明確にし、それを軸にしたパーパス・ブランディングは、今後ますます重要になるでしょう。自社の真の存在意義を見つけ、それを社会に伝えていく取り組みを、今日から始めてみてはいかがでしょうか。

---

パーパスを組織に浸透させる管理職の育成はこちらの記事もご参考ください。
⇒記事：https://pdca-school.jp/column/6570