新型ハラスメント『ハラハラ』予防と対策

新型ハラスメント『ハラハラ』予防と対策

「職場のハラスメント対策」が新たな課題を生み出しています。近年、企業におけるハラスメント防止の取り組みが強化される中、その対策自体が思わぬハラスメントを引き起こすという事例が急増しているのです。

新型ハラスメント「ハラハラ」とは

ハラスメントハラスメントの略で、他人の言動に対し反発や自己防衛の形で、過剰に反応して「ハラスメントだ!」と主張する嫌がらせ行為のことです。例えば、職場で上司が部下に対して不当な扱いや圧力を執拗にかけ、部下がその行動に対して不快感や苦痛を感じているとします。この場合、部下がその行動に対して「パワハラだ」と訴えることは、通常のハラスメント対応です。

しかし、上司が社会通念的に当然と思われる範囲で、部下の行動を叱責したとしても、部下が上司に対して過剰に反応し、さらには上司に「あなたの言動がハラスメントだ」と訴えるといった状況が生じることがあります。このように反応が行き過ぎた場合、ハラスメントだと訴えた側が加害者となる可能性があるのが「ハラスメントハラスメント」です。

ハラスメント対策が引き起こす逆効果

ハラスメントハラスメントが企業にもたらす影響は、想像以上に深刻です。過度に慎重なハラスメント対策により、管理職が必要な業務指導を躊躇し、結果として組織全体のパフォーマンスが低下するというケースがあります。

ハラスメントを恐れ指導を躊躇

さらに「発言がハラスメントと受け取られるかもしれない」という過度な警戒心から、部下への必要な指導を躊躇する傾向が強まっています。その結果、従来のようなチーム内の何気ない会話や懇親の機会が減少。チームワークの低下や情報共有の不足を招き、業務効率の悪化につながっているのです。

若手育成への影響

特に深刻なのは、若手社員の育成への影響です。上司からの適切なフィードバックが減少することで、必要な成長機会が失われ、次世代を担う人材のキャリア形成に支障をきたすケースが増加しています。このような状況は、長期的には組織の競争力低下にもつながりかねません。

具体的な対策と予防法

では、このハラスメントハラスメントにどう対処すればよいのでしょうか。まず重要なのは、組織全体での計画的な取り組みです。ハラスメント対策と適切な業務指導の境界線を明確にし、誰もが理解できる具体的なガイドラインを設定することから始めましょう。

組織レベルのハラハラ対策

① 指導カルテ制度
管理職が行う指導内容を記録し、上長や人事部門が定期的にレビューする仕組みを作ります。これにより、適切な指導と過度な抑制の両方を防ぐことができます。

② 360度フィードバック
部下からも上司の評価を行える仕組みを導入し、コミュニケーションの質を可視化します。これにより、過度に抑制的なコミュニケーションの改善につながります。

③ 指導ガイドライン整備
例)「叱責」と「指導」の違いを具体的に示す
NG例:「お前はいつもミスばかりだ」
OK例:「○○の部分でミスが発生しています。次回は△△の確認を行いましょう」

個人レベルのハラハラ対策

① 1on1ミーティング
週1回15分程度の短時間面談を設定し、業務上の懸念事項を早期に共有します。

指導目的の明確化
指導を行う際は、まず目的を説明してから内容に入る習慣をつけます。
例)「営業力を高めるためのアドバイスをさせてください」

また、予防策として効果的なのが、ハラスメント研修の見直しです。単なるルール説明に終始するのではなく、実践的なコミュニケーションスキルの向上に重点を置いた研修プログラムを導入することで、バランスの取れたハラスメント対策が実現できます。

まとめ

ハラハラは、職場のハラスメント対策が新たなハラスメントを生む皮肉な現象です。
この問題に対処するためには、組織と個人の両レベルでの取り組みが欠かせません。
適切なガイドラインの設定、オープンなコミュニケーションの促進、そして実践的な研修プログラムの導入など、バランスの取れたアプローチが重要です。一人ひとりが問題を認識し、建設的な対話を心がけることで、真に働きやすい職場環境を実現することができます。

パワハラの基準についてはこちらで解説しております。
⇒【浅井隆志の経営暴論】記事:パワハラの基準はどこにある?

【部下指導のキホン】についてはこちらの動画で解説しております。

⇒動画:なんとなく指導から脱却!教えると任せるの分かれ道

 

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