【2025年最新】逆パワハラとは?部下からのハラスメントを防ぐ対策と事例を徹底解説

【2025年最新】逆パワハラとは?部下からのハラスメントを防ぐ対策と事例を徹底解説

「ちょっと注意しただけなのに、部下から『パワハラだ』と言われてしまった…」

このような悩みを抱える管理職が増えています。
実は、課長職の約4割が「逆パワハラ」を経験しているという調査結果があります。さらに、逆パワハラを受けた課長のうち約6割が「離職や休職のきっかけになり得る」と回答しており、深刻な問題として認識されています。
本コラムでは、増加する逆パワハラの実態から、その原因、そして明日から実践できる具体的な対策まで、人事・労務担当者や管理職の方に向けて徹底解説します。

逆パワハラとは?定義と基本を理解する

逆パワハラとは、部下から上司への嫌がらせや攻撃的な言動などのパワーハラスメントで、上司の就業環境を害するものをいいます。
一般的にパワハラは「上司から部下へ」というイメージが強いですが、法律上のパワハラの定義は上司・部下の関係性に限定されていません。厚生労働省が定めるパワハラの3要件を満たせば、部下から上司への言動もパワハラに該当します。

パワハラを定義する3つの要素

パワハラとして認定されるためには、以下の3つの要素をすべて満たす必要があります。

①優越的な関係を背景とした言動
上司に限らず、取引先や影響力のある人、集団も含まれます。例えば、ITスキルで優位に立つ若手社員や、専門知識を持つベテラン社員が、その優位性を背景に上司に対して攻撃的な言動をとる場合も該当します。

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
業務上明らかに必要性のない言動、業務の目的を大きく逸脱した言動、長時間にわたる攻撃的な態度などが該当します。

③労働者の就業環境が害されるもの
言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い身体的・精神的苦痛を与える態様の言動の場合には、1回でも就業環境を害する場合があります。

逆パワハラの実態:衝撃のデータ

職場のハラスメント問題は依然として深刻です。エン転職の調査によると、全体の6割以上が「ハラスメントを受けたことがある」と回答しており、そのうちの9割が「パワハラ」であることがわかっています。
そして注目すべきは、管理職自身もハラスメントの被害者になっているという事実です。

課長職の4割が逆パワハラを経験

株式会社ジェイフィールの調査によると、以下のような実態が明らかになっています。

【逆パワハラに関する調査結果】

・課長の約4割が逆パワハラを経験したことがあると回答
・周囲の4割以上が逆パワハラを見たことがあると回答
・逆パワハラを経験した課長のうち約6割が「離職や休職のきっかけになり得る」と回答

具体的な逆パワハラ行為としては、「あからさまに不機嫌な態度をとる」「上司の知識・経験を否定する」「小ばかにした感じで笑う」が上位3つとして挙げられています。

逆パワハラの具体的な事例5選

逆パワハラにはさまざまなパターンがあります。以下の事例を参考に、自社で同様の問題が起きていないか確認してみてください。

事例①:注意・指導に対する過剰な反発

上司からの注意・指示に対して執拗に反発・反論を繰り返したり、「パワハラだ」「訴えてやる」などと過剰に反応し、指示や指導を受け入れない行為です。適切な業務指導であっても、部下が「ハラスメントだ」と主張することで、上司が萎縮してしまうケースが増えています。

事例②:SNSでの誹謗中傷

誰でも閲覧できるSNSやオンライン上で上司の悪口、個人情報、プライベートな内容を投稿・拡散し、上司の名誉を傷つける行為です。匿名での投稿であっても、内容から特定される場合があり、上司の社会的信用を著しく損なう可能性があります。

事例③:上司の配置転換・解雇の要求

人事部門や経営層に対して、「この上司とは働けない」などと主張し、上司の異動や解雇を執拗に要求する行為です。正当な理由なく、一方的に上司を排除しようとする動きは逆パワハラに該当します。

事例④:悪質な噂の流布

上司について事実と異なる情報や誇張した悪評を、他部署の社員や取引先などに意図的に広め、上司の信用や評判を貶める行為です。職場内での人間関係を悪化させ、上司のマネジメントを困難にします。

事例⑤:意図的なコミュニケーション拒否

上司からの話しかけや指示を意図的に無視する、返事をしない、報連相をしないなど、業務上必要なコミュニケーションを拒否する行為です。チームの業務遂行に支障をきたし、組織全体の生産性低下につながります。

逆パワハラが引き起こす3つの弊害

逆パワハラは、個人の問題として放置できない全社的なリスクです。具体的には以下の3つの弊害を引き起こします。

弊害①:上司のメンタルヘルスへの悪影響

継続的な逆パワハラにより、上司がうつ病や適応障害などの精神的問題を抱え、休職や退職に至るケースがあります。経験豊富な管理職を失うことは組織の大きな損失であり、突然の退職により残されたチームの業務負担が増大します。

弊害②:人材育成の停滞

上司が部下からの過剰な反発や「ハラスメントだ」という訴えを恐れ、適切な注意や指導ができなくなります。部下の成長機会が失われるだけでなく、上司が持つ知識や技能が次世代に継承されず、組織の競争力が低下します。

弊害③:組織の機能不

上司と部下の信頼関係が崩れ、指示命令系統が機能しなくなることで業務の質が低下し、ミスや事故が発生しやすくなります。情報共有が滞り業務効率が悪化するほか、組織の統率力低下により不祥事が発生しやすくなります。

なぜ逆パワハラは起きるのか?3つの視点から原因を分析

逆パワハラが発生する原因は、上司側、部下側、そして組織・環境側の3つの視点から分析する必要があります。

【上司側の要因】

①管理職の指導力・マネジメント力不足
人手不足で実務と管理職業務を兼務し、部下の育成や指導が後回しになっているケースが多くあります。また、部下との日常的なコミュニケーションが不足し、信頼関係を構築できていないことも原因の一つです。

②過剰なハラスメント意識
部下への指導の際に「パワハラにならないか」と過剰に意識してしまい、必要な場面でも指導できずに部下を放置してしまうケースがあります。

⚠️ 注意:部下の管理や指導が不十分だと、部下のほうも適切な管理・指導を行わない上司を軽視するようになってしまうので要注意です。

【部下側の要因】

①ハラスメントに関する知識不足
適切な業務指導とパワハラの違いを理解しておらず、注意されると「パワハラだ」と過剰に反応する場合があります。また、逆パワハラという概念を知らず、自分の言動が問題であるという自覚がないケースも多いです。

②叱責・失敗・挫折の経験不足
現在の若手は「褒めて伸ばす」教育が主流の環境に置かれていた人が多く、叱責や失敗の経験が少ない傾向があります。注意や失敗を経験した際に自分の問題として受け止められず、上司からの指導・注意を正当なものとして受け入れにくくなっています。

③経験値や能力値の逆転
若い部下のほうがITスキルなどに早く適応し、年配の上司よりも能力値で上回るケースが増えています。また、経験値で勝る年配の従業員が若手上司の部下に就くケースもあり、上司に対する尊敬が薄れ、なめられやすくなっています。

④社会の価値観の変化
ハラスメント概念の浸透や年功序列型雇用システムの崩壊により、立場や年齢に関係なく意見を言ってよいという風潮になっています。かつては上の立場や年長者への反論は良しとされなかったものの、近年は部下からの主張が当然視されるようになりつつあります。

【組織・環境側の要因】

①社内教育の不足
多くの企業で管理職を対象としたパワハラ研修を実施している一方で、一般の社員に対しての逆パワハラに関する教育は十分に行われていません。また、管理職に対するマネジメント研修が不十分で、上司がパワハラにならない正しい指導方法を理解していないケースもあります。

②相談窓口・対応体制の不備
上司が被害者となる可能性を想定しておらず、被害を相談する窓口や仕組みが設置されていない、または機能していません。結果として、上司が孤立しパワハラ被害を訴えにくい状況になっています。

企業に求められる4つの逆パワハラ対策

逆パワハラを防止するために、企業として取り組むべき対策を4つ紹介します。

対策①:就業規則の整備

パワハラ・逆パワハラの定義と懲戒規定を明記しましょう。どのような行為が問題となるのかを社内で明確化し、周知徹底することが重要です。就業規則に明記することで、逆パワハラを行った者に対して厳正に処分を行うという企業の姿勢を示すことができます。

対策②:相談窓口の設置

社内外に相談できる体制を構築しましょう。上司が被害者となる場合も想定し、匿名性を保ちながら相談できる仕組みを整えることが大切です。管理職向けの専用相談窓口を設けることも効果的です。

対策③:全社員向けハラスメント研修の実施

適切な指導とパワハラの違いを周知しましょう。管理職だけでなく、一般社員にもパワハラの概念を正しく理解させることが重要です。逆パワハラという概念の周知も忘れずに行いましょう。

対策④:管理職のマネジメント力強化

部下との信頼関係構築と正しい指導法の習得を支援しましょう。定期的な研修やコーチングを通じて、実践的なスキルを身につけさせることが効果的です。

明日からできる!管理職向け逆パワハラ対策

組織的な対策と並行して、管理職個人としても実践できる対策があります。具体的な方法を2つ紹介します。

【実践①】定期面談・日常会話で信頼関係を構築する

◆ 定期的な1on1の時間を確保する
週1回、最低でも月1回は15~30分程度の1on1を実施しましょう。業務の進捗だけでなく、部下が抱えている課題や悩みをヒアリングすることが大切です。部下の話を遮らず、最後まで聞く姿勢を示すことで、信頼関係の土台が築けます。

◆ 日常的なコミュニケーションを増やす
朝夕の挨拶や日常的な声かけを通じて、部下との接点を増やしましょう。
部下の成果や改善が見られた際は、具体的に言葉で伝えることが効果的です。

💡 具体例
・「あの問い合わせ対応、的確だったね」
・「今日の報告、要点がまとまっていて良かったよ」
※結果だけでなく、改善しようとする姿勢や取り組みも評価しましょう

【実践②】注意・指導時に守るべき5つのポイント

適切な指導を行うことで、逆パワハラのリスクを軽減できます。以下の5つのポイントを意識してください。

ポイント①:事実ベースで指摘する
人格否定や曖昧な表現は避け、具体的な事実のみを伝えましょう。

❌ NG例:「お前は本当に使えない」
⭕ OK例:「今回の報告書は期限を2日過ぎています。次回はどうすれば間に合いそうですか?」

ポイント②:個別の場で指導する
他の社員がいる場所での叱責は部下の尊厳を傷つけるため避けましょう。
個室や会議室など、第三者の目がない場所で話すことが重要です。

ポイント③:感情的にならない
声を荒げる、机をたたく、威圧的な態度は厳禁です。感情的になりそうな時は、深呼吸して落ち着いてから話すようにしましょう。

ポイント④:改善策を一緒に考える
一方的に叱責して終わりではなく、「どうすれば改善できるか」を部下と共に検討しましょう。
「次はどう対応すればいいと思う?」と問いかけ、部下自身に考えさせることが効果的です。

ポイント⑤:指導の記録を残す
「言った」「言わない」問題を防ぐため、指導の日時、内容、部下の反応を指導記録として残しておきましょう。
万が一のトラブル時に、自身の身を守る証拠にもなります。

✨ 重要なメッセージ

パワハラを恐れて必要な指導を避けると、部下は成長せず、組織の成長も停滞します。
正しい方法で指導すれば、自信を持って部下育成ができます。

まとめ:逆パワハラ対策は組織全体で取り組むべき課題

本コラムの内容を振り返りましょう。

【本コラムのポイント】

☑ 約5~6人に1人の課長が逆パワハラ被害を経験している

☑ 逆パワハラは上司のメンタル不調だけでなく、組織全体の機能不全を引き起こす

☑ 背景には上司の指導力不足・部下の知識不足・社内教育の不足がある

日常的な1on1と信頼関係構築が、適切な指導を受け入れてもらえる土台になる

事実ベースで冷静に、改善策を一緒に考える指導法で逆パワハラを防ぐ

逆パワハラは、放置すれば組織に深刻なダメージを与える問題です。しかし、適切な対策を講じることで、防止・解決することが可能です。
まずは、本コラムで紹介した対策の中から、自社で取り組めることから始めてみてください。管理職一人ひとりが正しい指導法を身につけ、組織全体でハラスメントを許さない文化を醸成していくことが、逆パワハラ防止の第一歩となります。


全社員が正しくハラスメントを理解するために

PDCAの学校では、貴社の課題に合わせたハラスメント研修をご提供しています。
事前アンケートによる現状把握から、研修実施、受講生面談まで、一貫したサポートが可能です。

・パワハラを定義する3つの要素
・逆ハラスメントの事例と対策
・自責思考と他責思考の違い
・教わる側が意識すべきこと

など、実践的な内容で組織全体のハラスメント理解を深めます。

無料で学べる全4章
Eラーニング「新入社員研修」

ビジネスマナーとホウレンソウなど、ビジネスに必要な知識習得とケーススタディによるスキル習得ができる

第一章
超実践!ビジネスマナー
第二章
業務効率向上!ホウレンソウ(報連相)
第三章
絶対関係構築!コミュニケーション
第四章
クレームをファンに変える!顧客対応
無料で学べる全4章