新卒の五月病による退職リスクと効果的な予防法

新卒の五月病による退職リスクと効果的な予防法

新卒の五月病の現状と企業への影響

多くの企業が直面している社員の意欲低下問題。この記事では人事担当者・経営者が知っておくべき新卒の五月病の対策と予防法をご紹介します。

新卒の五月病とは?定義と症状

新卒の五月病とは、新社会人が入社から1~2カ月経過した5月頃に、仕事への意欲低下や体調不良、出社拒否などの症状を示す状態です。医学的には「適応障害」の一種で、新環境への適応が難しくなっている状態と言えます。

新卒社員(新入社員)にとって4月は期待と緊張の中で新鮮さもありますが、GW後の5月になると日常業務が始まり、現実とのギャップを感じることが増えます。その結果、多くの新入社員が意欲低下や不安感を抱え、五月病の状態に陥るのです。

主な症状には以下があります。
– 極度の疲労感や倦怠感
– 出社への強い抵抗感
– 集中力の低下
– 睡眠障害(不眠や過眠)
– 理由のはっきりしない体調不良

企業への影響と損失

新卒五月病は一般的な現象です。厚生労働省の調査によれば、新卒入社3年以内の離職率は大卒で約3割に達しており、この早期離職の要因の一つが五月病であると考えられています。

この現象が企業にもたらす影響は無視できません。新卒社員一人の採用には、選考プロセスから入社後の研修まで含めると多額のコストがかかります。そのため、早期離職は企業にとって大きな経済的損失となります。

また、メンタルヘルスの不調は社員の生産性低下にも直結します。一般的に、メンタルヘルス不調を抱える社員の生産性は通常時と比較して著しく低下するとされています。これにより、企業全体のパフォーマンスや職場の雰囲気にも悪影響を及ぼす可能性があります。

新卒五月病の主な原因

発生原因は複合的ですが、主に以下が挙げられます。

現実とのギャップ:就活時に描いていた仕事内容と実際の業務の差

人間関係構築の難しさ:特にリモートワーク環境では対面でのコミュニケーション機会が減少

過剰な期待とプレッシャー:企業からの期待や自分へのプレッシャー

自己効力感の低下:「自分は役に立っていない」という感覚

新卒社員が抱えるこれらの問題に対しては、企業側の適切な理解と支援体制の構築が重要です。早期発見と対応により、五月病の深刻化や離職につながるリスクを軽減することができます。

効果的な対策と予防法

予防策:五月病を未然に防ぐ

新卒五月病は「予防」が重要です。企業が取り組むべき予防策を紹介します。

オンボーディングの充実
入社前から3ヶ月間の計画を細かく設計。特に「何を学び」「何ができるようになるか」の道筋を明確にします。

定期的な1on1面談
上司や先輩社員との面談で、新入社員の不安や悩みを早期発見できます。厚生労働省の「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」でも重要性が指摘されています。

メンター制度の導入
直属上司以外に相談できるメンターを設け、孤立感を防ぎます。多くの企業でこの制度を取り入れることで、新入社員の定着率向上や職場適応の改善が報告されています。メンターの存在は新入社員が悩みを気軽に相談できる環境づくりに貢献し、組織への帰属意識を高める効果があるとされています。

適切な業務負荷調整
段階的に難易度を上げ、「小さな成功体験」を積み重ねて自己効力感を高めます。

発生時の対処法

予防策を講じていても、五月病が発生することはあります。その際の対処法です。

早期発見・早期対応
表情の変化、遅刻・欠勤の増加、コミュニケーション減少などのサインを見逃さず対応します。
原因特定の面談
サポートする姿勢で面談し、原因を特定します。
業務の見直し
業務内容や量を見直し、適切な難易度の業務を割り当てます。

メンタルヘルスをサポートする組織作り

新卒五月病対策を持続的な取り組みにするには、組織全体でメンタルヘルスをサポートする体制作りが重要です。

メンタルヘルス研修の実施
管理職向けに研修を実施し、部下の変化に気づく感度を高めます。

相談窓口の設置
社内外の相談窓口を設け、気軽に相談できる環境を整えます。

まとめ:新卒五月病対策は企業の競争力強化につながる

新卒五月病は放置すれば離職率上昇や生産性低下を招き、企業に大きな損失をもたらします。しかし適切な予防策と対応策で、その影響を最小限に抑えられます。

重要なのは、これを単なる「若者の甘え」と捉えず、組織全体の課題として認識すること。新卒社員のメンタルヘルスケアは、離職防止だけでなく、企業の持続的成長のための「人材投資」です。

充実したオンボーディング、定期的な面談、メンター制度など、本記事で紹介した対策を自社に合わせて取り入れてください。新入社員が生き生きと働ける環境づくりは、企業全体の活性化につながります。

新卒五月病対策は単なる「問題解決」ではなく、企業の競争力を高める「組織開発」の一環として捉えることで、より効果的な取り組みとなるでしょう。


新入社員の育成方法についてはこちらをご参考ください。
⇒記事:https://pdca-school.jp/column/2664

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