教育者の教育が変える組織の未来
2025.08.01

多くの組織で人材育成が重視される中、その質を左右する「教育者の教育」に焦点を当てた取り組みが注目されています。本記事では、教育者の教育の重要性と実践アプローチについて考察します。
教育者の教育の重要性と現状
「教育者の教育」とは、組織内で人材育成や研修を担当する講師に対する専門的な育成プログラムのことです。単に知識を伝える能力だけでなく、学習環境の設計や効果測定なども含みます。つまり、教育のプロとして必要な能力を体系的に高めるプロセスを指すのです。
近年、VUCA時代と呼ばれる変化の激しいビジネス環境では、組織の学習能力が競争力を左右します。そのため、単発的な研修だけでは不十分です。むしろ、継続的に組織全体の学習能力を高める方法が求められています。こうした背景から、「教育者の教育」の重要性が高まっているのです。
教育者の教育がもたらす価値
教育者の教育が組織にもたらす価値は多面的です。まず、教育の質と効率が飛躍的に向上します。体系的に育成された教育者は、学習者の理解度を的確に把握します。そして、適切なアプローチで知識やスキルを伝えるため、研修効果の定着率が高まります。
また、知識移転の促進という価値も見逃せません。教育のプロフェッショナルが組織内に増えることで、ベテラン社員の知見や暗黙知が効果的に形式知化されます。このため、世代や部門を超えた重要なノウハウの継承が可能になるのです。さらに、教育者を中心とした「学習する組織」の文化が醸成されます。その結果、環境変化への適応力や自律的なイノベーション創出力も強化されるでしょう。
日本企業の現状と課題
日本企業の多くは社内教育を重視する傾向がありますが、教育担当者自身の育成に体系的に取り組んでいる組織はまだ限られています。多くの組織では、優秀な実務者を教育担当に抜擢するものの、教える技術については「現場で学ぶ」というアプローチが主流です。その結果、教育の質にばらつきが生じ、投資効果が最大化されないという課題が生じることがあります。
特に中堅・中小企業では、専任の人材開発担当者を配置する余裕がありません。そのため、兼任者が研修を担当するケースが多くなります。このような状況では、トレーナーとしてのスキル向上に十分な時間を割けないという構造的な問題も存在します。さらに、指導者育成に関する評価指標が不明確です。そのため、その重要性が組織内で十分に認識されません。結果として、予算や時間の配分が後回しにされがちという現実もあります。
効果的な実践アプローチ
効果的な教育者育成の具体的手法
– トレーナーズトレーニング(講師が講師を育てる仕組み)
教育者を育成する最も効果的な方法の一つが「トレーナーズトレーニング」です。これは、経験豊富な教育者が新人教育者を育成するプログラムです。単に教え方のテクニックを伝えるだけでなく、「なぜその教え方をするのか」という背景理論や判断力までを伝承することが重要です。
このプロセスは、モデリング(熟練教育者の観察)→ロールプレイ(実践とフィードバック)→実践機会(実際の研修担当)→振り返り(分析と改善)のサイクルを繰り返すことで、教育者としての実践的スキルを段階的に高めていくことができます。
– メンタリングとコーチングの使い分け
教育者の育成では、メンタリングとコーチングを状況に応じて使い分けることが効果的です。メンタリングは経験者が知見や解決策を共有する手法、コーチングは質問を通じて相手の気づきを促す手法です。
新人教育者には初期段階ではメンタリングが効果的で、ある程度経験を積んだ段階ではコーチングに移行するという段階的アプローチが有効です。この移行により、依存せずに成長できる自立した教育者を育成できます。
教育者育成の発展的アプローチ
– ブレンド学習による多様な学習体験の提供
対面とオンラインを組み合わせたブレンド学習は、教育者の育成においても有効です。例えば、理論的な内容はオンデマンド学習で学びます。一方、実践的なスキルは対面セッションで磨くといった形です。このように、内容に応じた最適な学習環境を提供できるのです。また、教育者自身がブレンド学習を体験することで、学習者の立場を理解できます。その結果、より効果的な学習環境を設計する能力が高まります。さらに、デジタルツールの活用法も身につきます。加えて、オンライン環境でのエンゲージメント維持といった現代的なスキルも習得できるのです。
– 実践コミュニティの形成
教育者の成長は一度の研修で完結しません。そのため、継続的な学びの場を設けることが重要です。具体的には、定期的な事例研究会を開催します。あるいは、相互フィードバックセッションを実施するのです。こうして、教育者同士が互いの経験から学び合う「実践コミュニティ」が形成されます。このコミュニティでは、様々な共有が行われます。特に、成功体験と失敗事例の共有は重要です。また、異なる部門や背景をもつ教育者同士の交流も活発に行われます。その結果、新たな視点や手法が生まれていくのです。
組織への定着ポイント
トップマネジメントのコミットメント:経営層が「教育者の質が組織の未来を決める」という認識を持ち、メッセージを発信することで、全社的な取り組みとして教育者の育成が促進される可能性があります。
キャリアパスの明確化:教育専門職としてのキャリアトラックを設け、専門性を高めるほど評価や処遇が向上する仕組みを構築することで、優秀な人材が教育者を志望するようになり、教育の質が向上するという好循環を生み出せます。
効果測定の視点
教育者の教育の効果測定は投資対効果を可視化する上で不可欠です。効果的な測定には、多層的なアプローチが考えられます。
4段階評価モデルの活用
教育者の教育の効果は、次の4つのレベルで段階的に測定できます:
① レベル1(反応):教育者自身の満足度や理解度
② レベル2(学習):教育スキルや知識の習得度
③ レベル3(行動):研修場面での新しい手法の実践度
④ レベル4(結果):受講者の行動変容や業績向上
特に重要なのはレベル3と4の測定です。教育者が学んだ技法の実際の使用頻度や、担当した部署の業績変化を追跡することで、真の効果を把握できます。
また、効果は時間をかけて現れるため、複数のタイミングでの測定と、成功事例や課題などの質的データ収集も効果的です。教育者の教育への投資対効果を明確にすることは、予算獲得の正当化だけでなく、プログラム自体の継続的改善にも貢献します。
まとめ
「教育者の教育」は組織成長に不可欠な要素です。効果的なアプローチとして、トレーナーズトレーニング、メンタリングとコーチングの使い分け、ブレンド学習などが考えられます。また、定着させるにはトップのコミットメント、明確なキャリアパスが有効でしょう。不確実性の高いビジネス環境において、組織の学習能力の高さが競争優位性を左右する中、教育者の育成は持続的成長のための重要な選択肢です。
コーチングとティーチングの違いについてはこちらをご参考ください。
⇒記事:https://pdca-school.jp/column/2875
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- 教育者の教育が変える組織の未来
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