リカレント教育で社員のスキルと企業価値を高める方法
2025.03.06

リカレント教育の基礎知識と企業メリット
リカレント教育とは何か
リカレント教育とは、社会人になった後も、必要に応じて教育機関などに戻って学び直す循環型の教育システムです。企業にとってのリカレント教育は、従業員が最新の知識やスキルを習得し続けることで、変化の激しいビジネス環境に対応できる組織を構築するための重要な戦略と位置づけられます。
「リカレント(recurrent)」は「循環する」「繰り返す」という意味を持ち、働きながら学び、その学びを仕事に活かし、さらに新たな課題に直面したら再び学ぶという循環を表しています。従来の「学校で学び→企業で働き続ける」という一方通行のキャリアパスではなく、学びと仕事を循環させることで、企業と従業員の双方が成長し続ける関係を築くことができます。
企業がリカレント教育に取り組むべき理由
企業がリカレント教育に積極的に取り組むべき背景には、以下のような要因があります。
理由1. テクノロジーの急速な進化
AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、ビジネスモデルや必要なスキルが急速に変化しています。「一度習得したスキルで一生働ける」時代は終わり、継続的な学習なしでは企業も個人も競争力を維持できなくなっています。
理由2. 人材獲得競争の激化
少子高齢化による労働人口の減少で、優秀な人材の獲得競争が激化しています。キャリア開発支援やリカレント教育の機会を提供する企業は、人材採用・定着において優位に立てます。
理由3. 従業員のキャリア観の変化
終身雇用・年功序列が崩れる中、従業員は自律的なキャリア形成を求めるようになっています。企業が学びの機会を提供することは、従業員エンゲージメントの向上につながります。
理由4. ビジネスサイクルの短期化
製品・サービスのライフサイクルが短くなり、新規事業開発やイノベーションの必要性が高まっています。社員の継続的な学びは、企業の革新力を高める原動力となります。
リカレント教育による企業メリット
リカレント教育を導入することで、企業には以下のようなメリットがあります。
メリット1. 生産性と業績の向上
日本生産性本部の調査によれば、従業員の学び直しを支援している企業は、そうでない企業と比較して労働生産性が約15%高いという結果が出ています。新しい知識やスキルを習得した従業員は、業務効率の改善や新たな価値創造に貢献します。
メリット2. 人材採用・定着率の向上
リクルートワークス研究所の「ワーキングパーソン調査2022」では、「学びの機会が充実している」企業で働く従業員の定着意向は、そうでない企業と比較して約1.5倍高いことが示されています。特に若手世代は「成長できる環境」を重視する傾向があり、リカレント教育の充実は採用競争力の向上につながります。
メリット3. イノベーション創出力の強化
異なる分野の知識を持つ人材が増えることで、社内の知識の多様性が高まり、新たな発想やイノベーションが生まれやすくなります。特に、AI・データサイエンスなどの先端領域の学習は、新規事業開発やビジネスモデル変革の原動力となります。
メリット4. 組織の柔軟性と変化対応力の向上
様々なスキルを持つ人材が増えることで、事業環境の変化に応じた人材の再配置や新規プロジェクトの立ち上げがスムーズになります。これにより、組織全体の変化対応力(レジリエンス)が高まります。
日本企業におけるリカレント教育の現状と課題
日本企業におけるリカレント教育の取り組みは、諸外国と比較するとまだ発展途上にあります。
厚生労働省の「令和3年度能力開発基本調査」によれば、計画的なOFF-JT(業務外訓練)を実施している企業の割合は大企業で約70%、中小企業では約40%にとどまっています。また、社員の自己啓発を支援している企業は全体の約50%という結果です。
日本企業がリカレント教育を進める上での主な課題としては、以下が挙げられます。
これらの課題を克服し、効果的なリカレント教育を実現するためには、経営戦略と人材育成戦略を連動させ、組織文化として「学び続ける」価値観を根付かせることが重要です。
リカレント教育の実践方法と成功のポイント
企業内リカレント教育の具体的な導入方法
リカレント教育を企業に導入するには、以下のようなステップが効果的です。
ステップ1. 現状分析と目標設定
まずは自社の事業戦略に照らして、どのような人材・スキルが必要かを明確にします。現在の社員のスキルセットとのギャップを分析し、リカレント教育の具体的な目標を設定します。
ステップ2. 教育プログラムの設計
分析結果に基づき、短期・中期・長期の教育プログラムを設計します。全社員共通のプログラムと、職種・レベル別のプログラムをバランスよく組み合わせることがポイントです。
ステップ3. 学習環境の整備
学習時間の確保(学習日の設定、時間外学習の手当など)や、学習スペースの確保(ラーニングセンター、オンライン学習環境など)を行います。
ステップ4. 評価・フィードバック体制の構築
学びの成果を適切に評価し、キャリアパスや処遇に反映させる仕組みを作ります。同時に、学んだことを実務で活かせているかフィードバックする機会も重要です。
効果的な社内プログラムの設計と運用
企業内でリカレント教育を効果的に運用するためのポイントを紹介します。
運用ポイント1. 多様な学習形態の組み合わせ
✅集合研修: 社内講師や外部講師による対面式の研修
✅オンライン学習: eラーニングやオンラインセミナーの活用
✅OJT(On-the-Job Training): 実務を通じた学習
✅自己啓発支援: 書籍購入補助、オンラインコース受講料補助など
✅社内勉強会: 従業員主導の学習コミュニティ
これらを組み合わせることで、様々な学習スタイルに対応できます。
運用ポイント2. 実践と結びついた学習設計
学んだことをすぐに実務で試せる機会を設けることが重要です。
例えば、研修で学んだ内容を実際のプロジェクトに適用するアクションラーニングや、学習成果を発表する場を設けるなどの工夫が効果的です。
運用ポイント3. 学習文化の醸成
経営陣自らが学び続ける姿勢を見せ、社内で「学ぶことは価値がある」という文化を醸成します。「失敗から学ぶ」ことを肯定的に捉える心理的安全性も重要です。
外部リソースの活用法と支援制度
自社だけでリカレント教育を完結させるのではなく、外部リソースを活用することも重要です。
1. 教育機関との連携
大学・大学院の社会人プログラム、専門学校、職業訓練校などと連携することで、高度な専門教育を提供できます。多くの大学では企業向けの定期講座やカスタマイズ研修も提供しています。
2. 公的支援制度の活用
リカレント教育に関する主な公的支援制度には以下のようなものがあります。
✅人材開発支援助成金: 企業が従業員に対して行う教育訓練の経費や賃金の一部を助成
✅キャリア形成促進助成金: 中小企業の労働者のキャリア形成を支援する助成金
✅教育訓練給付制度: 従業員個人が受講した際に給付金を受けられる制度
これらの制度を活用することで、企業の費用負担を軽減しながらリカレント教育を進めることができます。
これからの企業に求められる取り組み
急速な技術革新と社会変化の中で、リカレント教育は企業の持続的成長と競争力維持のために不可欠な戦略となっています。単なる研修制度ではなく、経営戦略の一環として位置づけ、組織文化として「学び続ける」価値観を根付かせることが重要です。
リカレント教育を効果的に導入するためのポイントは以下の通りです:
1.事業戦略と連動した明確な目標設定
2.多様な学習形態の組み合わせと実践機会の提供
3.学習時間と環境の確保
4.外部リソースと公的支援制度の活用
5.学習成果の評価と処遇への反映
リカレント教育に積極的に取り組む企業は、生産性向上、イノベーション創出、人材確保と定着率向上などの成果を上げています。
経営者・人事担当者の皆様には、「教育は費用ではなく投資である」という認識のもと、自社のリカレント教育体制を見直し、未来に向けた人材育成戦略を構築されることをお勧めします。社員と企業がともに学び、成長し続ける組織こそが、これからの時代を勝ち抜いていくのです。
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